オリジナルコンテンツ

【座談会】2021年夏ドラマまとめ編

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第13弾★

TOKYO2020の影響を編成上少なからず受けたともいえる今年の夏ドラマ。
数々の作品が話題に挙がりました。
ドラマの味わい方も、キャスティング、ストーリー、脚本家、配信で全話一気見、などなど十人十色。
今月も、マイベストTV賞プロジェクトメンバーが注目作を総括します!

納得いく配役、納得いく結末

T:夏ドラマが最終回を迎えました。感想を語っていきましょう。
S:「ハコヅメ~たたかう!交番女子~!」(日本テレビ系)は、最後までおもしろかった。売れっ子役者たちが見せる演技の応酬に、毎回爆笑したり感動したり、忙しかったです。中でも印象的だったのは、怠け者と見せかけて、実はめちゃ切れ者のハコ長(ムロツヨシ)。ゆるふわだけれど家族思いで部下思い、そして捜査では沈着冷静。多面性を自然に見せる演技に引き込まれました。男社会かつタテ社会の警察組織をおちょくりながらも、そのなかで懸命に職務を全うする警察官の心意気は敬意を込めて描いていて、気持ちのよいお仕事ドラマでした。
N:個人的には正直日テレのドラマにあまり期待をしていないのですが、このドラマは警察官のなんでもない日常とか、くすっと笑える会話とかもよかったし、そんななかで、いろいろ過去にあった出来事による傷みたいなものもうまく描かれていたと思いました。
S:途中で撮影が中断してしまったせいか、最後の大ネタ「守護天使」の物語が駆け足となってしまったのがとても惜しまれます。
H:そこは本当に惜しいところ。さらにオリンピック期間を挟んだため視聴習慣が壊れてしまい、続けて見られた作品が少なかったなかですごく健闘したと思う。今期では一番よかった。やっぱりあのキャスティングの妙というか、キャラにみんな合っていましたよね。
I:ドラマプレミア23「うきわ ―友達以上、不倫未満―」(テレビ東京系)は、最初は戸惑いました。この枠は「珈琲いかがでしょう」「シェフは名探偵」と続いていたので、「飲食系」を期待していたからかもしれないんですが……。不倫をめぐる2組のカップルがいて、最終回で選んだ道は別々。でも、どちらの結末にも納得がいって、爽やかな印象が残りました。ファンタジックな演出もよかったです。
N:「うきわ」のプロデューサーは「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」と同じ。作風はぜんぜん違いますが、どういうものでもしっかりと作れる人なんだなということが、この2本目で伝わりました。

レジェンドたちに魅せられて

T:同じテレビ東京だと、水ドラ25「八月は夜のバッティングセンターで。」(テレビ東京系)は“夏”を感じさせる映像もよかった。機械油の匂いがしそうな真夏の夜のバッティングセンター。それと対比するかのような青空がまぶしい野球場。話はたいしたことなかったけれど、この映像だけも満足感があった。
Y:各回の登場人物の悩みとリンクさせる「レジェンド選手」の選び方が絶妙で、毎話の展開が楽しみだった。実在の「レジェンド」を登場させる同じ手法を使った木ドラ24「お耳に合いましたら。」(テレビ東京系)も、音声メディアの魅力が伝わるだけでなく、主人公の恋愛や仕事での壁の乗り越え方など、コミカルだけれども芯のある描かれ方で好感が持てました。どちらも、ドラマを起点に実際の野球やラジオ・ポッドキャストに興味を持つきっかけを作っていたのも興味深いです。
N:「お耳に合いましたら。」は、一話ごとに“チェンメシ(チェーン店グルメ)”が登場して、レジェンドDJという実在のDJが出てきて、ポッドキャスト番組も配信してという、仕掛けの多いドラマでした。仕掛けが多いと、なかなかドラマ自体の内容はおざなりになってしまうことも多いのに、主人公の美園(伊藤万理華)と同僚二人(井桁弘恵、鈴木仁)との関係性の描き方には、毎回ちょっとグッとくるところがありました。今までにない感覚のドラマだったと思います。

最後は感動、最後まで感動

T:その他はどうでしょうか。
I:今期は、「何が魅力かわからない」と思いながら見始めて、最後は「よかった」というパターンがいくつかありました。先に挙げた「うきわ」もそうだったんですが、金曜ドラマ「#家族募集します」(TBSテレビ系)も、そのひとつ。「ちょっと訳あり家族」が集まって、軋轢を経てそれぞれの光を見いだしていくという内容に、コロナ禍で人と人とのリアルな繋がりが薄れている今、心に刺さる人が多かったのでは。
N:「推しの王子様」(フジテレビ系)は、最初は『マイフェアレディ』の男女逆転バージョンかと思っていましたが、意外と真面目に描いていたので途中から引き込まれました。乙女ゲーム業界で働く知人に聞いたところ、仕事のトラブルなども、かなりリアルだったそうです。
T:オシドラサタデー「ザ・ハイスクールヒーロー」(テレビ朝日系)は、夏ドラマでもっとも楽しめた作品。高校生が戦隊ヒーローになるという設定の意外性。「秘密戦隊ゴレンジャー」へのあふれるオマージュ。そして、性の多様性までも盛り込む今日性。見どころ満載で、最後までワクワクしながら見られた。個人的には中山美穂と柳葉敏郎の共演がツボにハマりました。
H:日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(TBSテレビ系)は、正直ストーリー展開は「?」が多かったけれど、主演の鈴木亮平をはじめ演者が見事だったので見続けられました。コロナ禍にあって、命と向き合う物語はなかなか難しい部分もあったと思う。一方で、今だからこそ伝わるメッセージもあり、力強い作品でした。
T:「TOKYO MER」と「Night Doctor ナイト・ドクター」(フジテレビ系)は視聴率が良かったようですね。移動するER(救急救命室)と夜間診療という切り口は新鮮だった。医療ドラマも見せ方によってまだまだ視聴率が稼げることが証明されたように思います。
I:プレミアムドラマ「ライオンのおやつ」(NHK)も、さすが小川糸の原作。若い女性が自分の死に向き合っていく姿に、自分なら?と思った人も多いと思います。
T:ドラマ25「サ道2021」(テレビ東京系)は、マスクを着けての入場や、食事処でのマスク着用の会話、コロナ禍でのサウナの楽しみ方が描かれていて、その日常感がとても心地よかった。なかでも、ラブホの個室サウナを一人で利用する回は“神回”だった。

ツッコミ上等、戦略は周到

I:夏ドラマとは言えないかもしれませんが、9月19日・26日と2週連続で放送していた「バンクオーバー!~史上最弱の強盗~」(日本テレビ系)は好きでした。ツッコミどころ満載で笑えるんですが、ツッコまれることを百も承知で作った番組は、ある意味「視聴者参加型」に近いかも。ゆるい笑いで全編包みながらも、「人は見た目に惑わされる」というテーマに風刺がきいていました。
Y:放送後の展開の方法として興味深かったのは、「八月は夜のバッティングセンターで。」と「お耳に会いましたら。」が、どちらも放送後1週間の見逃し配信ではなく全話を配信サービスで公開していたこと。途中で興味を持った人がキャッチアップできるようにしている良い試みでした。フォーマットも配信形態も、テレビドラマの新しいあり方を模索する中での工夫が見られた取り組みだったと思います。
T:今期は、根本ノンジが「ハコヅメ」と「サ道2021」の2作の脚本を担当していた。それだけでも驚きだけれど、両方ともよくできた娯楽作だったので、今後も注目したい脚本家のひとりですね。こんなところでしょうか。秋ドラマも徐々にスタートしていますので、引き続きチェックしていきましょう。

以上(2021年10月1日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています