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【座談会】2025年冬ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第40弾★
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、2025年冬の注目ドラマを語ります!

学校から政界に切り込む!
詩森ろば×松坂桃李のタッグに注目

T:2025年も新ドラマがスタートしています。地上波放送を巡ってはさまざまな報道がされていますが、変わらず語っていきましょう。さっそく前クールに続き話題になっているTBSの日曜劇場からいかがでしょうか。
M:日曜劇場「御上先生」(TBS)はいい意味で“学園モノ”を裏切る気骨溢れる作品だと思います。第一話から強いメッセージ性に心掴まれました。「パーソナル・イズ・ポリティカル」……なるほど、脚本は映画『新聞記者」の脚本家に連ねる、詩森ろばの完全オリジナルストーリー。松坂桃李と再タッグで、今度は学校を舞台に、霞が関や永田町を描くとは! これから話題を呼ぶ社会派ドラマになる予感がします。「虎に翼」の後継なるかと勝手に期待も。
K:文科省の官僚が、東大進学率の高い私立高校に配属になるという異例の事態に、生徒も同僚も神経を尖らせざわつきます。御上先生(松坂桃李)は微塵も動じず独自のアプローチで生徒たちに対峙していき……。 未来のエリートとなる資質をもつ頭脳明晰な生徒らに対し、御上自身も官僚としてリアルに理不尽さや苦悩を抱えているからこそ、彼が放つ言葉は重く、生徒の心を揺り動かし始めます。とても刺激的な設定で、教育の本質を炙り出してくれそうで、この先の展開が楽しみです。
H:1話から引き込まれました。視聴者の先入観を巧みに使った演出も素晴らしい。あらゆる場面で男女平等とは?と訴えてきます。御上先生は「考えて」「言ったよね」という言葉で生徒を導きつつ、別の言葉を使う時は本音と思わせられる巧みな言葉の使い方が見事です。さまざまな事件がどう文科省とリンクして、どう進んでいくのか、毎週楽しみです。
M:俳優陣も実力派揃いで隙がない。抑えた演技、煽らない音楽、松坂桃李の問いかけがストレートに胸に響きます。これからの展開がとても気になりますね。
H:俳優陣は本当に豪華ですよね。生徒側も朝ドラヒロインが決まった髙石あかりに、独特の演技で作品にスパイスを与える蒔田彩珠、窪塚愛流、他にも豊田裕大、永瀬莉子、安斉星来、矢吹奈子、影山優佳など話題の若手俳優がズラリ。常盤貴子の演技に引き付けられ、なんと言っても今までとは違う堀田真由の役どころに興味が高まります。彼女がどう変化していくのかにも注目しています。

TBS金曜ドラマと火曜ドラマ
枠の持ち味を発揮

Y:金曜ドラマ「クジャクのダンス、誰が見た?」(TBS)は、初回から目まぐるしく展開するストーリーで見応えがありました。原作マンガも未完結で、真相にたどり着くまでの展開が現段階ではまったく予想できず、物語の行く末が気になるところです。広瀬すずは初のサスペンス主演とのことですが、松山ケンイチや磯村勇斗、成田凌といった存在感のある俳優たちとの相乗効果で、多くの見どころが出てくるのではと期待しています。
N:「Nのために」や「最愛」のような塚原あゆ子さんがやってきたTBSのサスペンスの雰囲気があって、引き込まれます。リリー・フランキーを見て改めて、この方は文筆業とイラストで出てきたのに、いい俳優になったんだなとしみじみしてしまいました。ほかの俳優も、一癖も二癖もある役ができて、演じることが楽しそうに見えます。
K:最愛の父を殺された大学生の娘(広瀬すず)が、父が遺した手紙に名指しされた弁護士(松山ケンイチ)とともに犯人探しを行うサスペンス。今のところ登場人物はどの人も怪しく見え、広瀬すずの出自すら謎めいていて、今期いちばん”考察”が盛り上がりそうなドラマです。出演者にも真犯人を隠したまま撮影が進行しているとのことで、キャスト同士の探り合いや疑念が演技にも反映されるはず。手の込んだ演出手法で、これはリアタイで見たくなります。
B:TBS金曜ドラマとしては名作の多いミステリーモノですが、本作も「親子の絆」を軸に、父の死をめぐるさまざまな謎が散りばめられていて、先の展開が気になる導入でした。広瀬すず、松山ケンイチ、リリーフランキーをはじめとする豪華役者陣の演技によって、登場人物への好感度も高くなっていると思います。
H:「御上先生」が文科省ならこちらは警察の闇を描く。いろいろな伏線に一喜一憂しながら楽しみたい作品です。
B:火曜ドラマ「まどか26歳、研修医やってます!」(TBS)はワークライフバランス、キャリアプランなど、「自分の人生」を第一に考えることが重要視される現在、医師という特別な仕事の重み・責務とどう折り合いをつけるかという問題提起が興味深いと思います。主演の芳根京子のも、等身大の研修医として応援したくなる素晴らしい演技です。
H:火曜ドラマはラブコメの印象も強いので、重厚な2本のドラマに比べてライトに見られるのが嬉しい。研修医の立場だからこそ見えてくる医療現場の今があるはず。ただ、若干軽く作りすぎているようにも思えます。一瞬で研修期間が終わるなど一つひとつの分野の医療に対して、もう少し掘り下げてもいいのでは?と思わなくもないのが本音です。これからに期待したいと思います。

期待を裏切らないバカリズム脚本
女子トークで右に出る人はいない!?

M:日曜ドラマ「ホットスポット」(日本テレビ)は「ブラッシュアップライフ」に続き、期待を裏切らない、バカリズムの脚本! “SF史上かつてない小スペクタクルで贈る、地元系エイリアン・ヒューマン・コメディー!”というコピーがすでに面白い。地味で人間味がありすぎる宇宙人・高橋役の東京03角田晃広と、幼馴染3人組の市川実日子、平岩紙、鈴木杏のダラダラした会話劇が安定の面白さ。些細な困りごとで宇宙人高橋の能力が発揮されるが副作用で蕁麻疹や腰痛って(笑)。可笑しくて優しい世界に心がほぐれます。
B:日常会話を中心に物語が展開しているのに、魅力的な役者陣と気持ちの良いコメディ展開で、ずっと見ていたくなるような面白さがあります。さすがのバカリズム脚本ですが、映像の質感や劇伴もクオリティが高いと思います。
K:宇宙人というオカルト的非日常と、同級生女子トークの日常どっぷり感が共存し、そこから醸し出されるバカリズム独特の世界はもう安定的な面白さ。女子トークを書かせたらいまやバカリズムの右に出る人はいないですね。 常に巨大な富士山が見えるロケーションも秀逸で、人智を超える何かが起きてもおかしくない気持ちにさせられます。お茶したり温泉に入ってまったりしていると思わせて、あっと驚く展開が待ち受けているのでは?と深読みしてしまいます。
Y:豪華キャストたちの独特の会話のテンポがバカリズム脚本ならでは。期待を裏切らない面白さです。宇宙人、高橋さんのシーンでは毎回吹き出してしまう瞬間があります。地元感を生かした小ネタ的な面白さの積み重ねで、1話があっという間に感じます。緩く見られる良さだけでなく、いろいろと伏線があるのでは、という点も含めて毎週楽しみです。

チャレンジングな表現方法
偏見や葛藤、苦しみに優しく向き合う

T:大河ドラマにも触れておきましょう。大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK)は上々の出だしです。まずは主人公の蔦屋重三郎が育った吉原をどう扱うのか注目していましたが、色気や暴力を省くことなく、当時の大人の世界を限界ぎりぎりに描いていて、上質の娯楽作品になっています。重三郎を生き生きと演じている横浜流星も期待以上です。
K:町人文化が隆盛を誇り戦さのない江戸後期の舞台設定は、歴史の長い大河ドラマでも初めて。制作陣の意気込みに期待が高まります。蔦屋重三郎が、著名な絵師となる写楽、喜多川歌麿、北斎らをどのようにプロデュースし世に出していくのか興味津々です。書店や出版業の原点が見られるのかもしれません。吉原というコミュニティを単純な善悪ではなく、粋な文化の集積であったり格差が存在したことまで、多面的に描いているのもチャレンジング。横浜流星の演技も気合い十分で、一年間楽しませてもらえそうです。
H:遊郭の貧困を描く際にどこまで表現するのか、話題になっていましたよね。NHKにとって大河はその時代を象徴する作品。コンプライアンスなどが厳しくなった今だからこそ、考え抜いた表現方法にトライしているように思えました。ストーリーだけでなく、作品作りへのこだわりも感じられた1話でした。
T:ドラマ10「東京サラダボウル」(NHK)は外国人居住者への差別や偏見が散見される現代で、彼らに真摯に向き合う刑事(奈緒)と中国語通訳人(松田龍平)の姿に清々しさを感じます。重いテーマを描いたドラマながら、異国情緒たっぷりの食べ物の数々がホッとさせられます。
Y:奈緒と松田龍平のバランスが絶妙。捜査事案を通し、外国人居住者それぞれの人生や葛藤が見えてきます。事件の背景から考えさせられることも多く、社会のなかで普段目を向けられていない部分について改めて認識を深める機会にもなりそうです。
T:フジテレビ作品はどうでしょうか?
B:「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった」(フジテレビ)は選挙で票を得るためにさまざまな社会問題を攻略しようとするもののトラブルが起き、最終的には改心して問題を解決するという各話同じ構造のドラマですが、当事者との向き合いによって最終的に優しい結論に辿り着く描き方は、ベタながら感動します。今のところ「日本一の最低男」とは思えない温かい内容ですが、タイトルの意味含め、今後の展開に期待です。
N:「フェンス」(WOWOW、2023年)のプロデューサーをしていた北野拓さんが手掛けた作品ということで楽しみにしていました。香取慎吾演じる主人公がニュース番組のプロデューサーであったけれど、退社して区議会議員を目指しているという設定ですが、毎回、この主人公が「間違う」んですね。でも、その間違いに気づいて改める様子が描かれているのがいいですね。特に二話にはゲイのカップルが出てきます。カップルのうちのひとりを、Netflixの恋愛リアリティーショー「THE BOYFRIEND」に出演していた当事者が演じていたこともよかったですし、ゲイのカップルがどのような偏見にさらされているのかも見えるようになっていました。
M:水ドラ25「晩餐ブルース」(テレビ東京)は、「きのう何食べた?」「今夜すきやきだよ」「作りたい女と食べたい女」に次ぐ、食を通じた人間関係と生活のドラマ。今回は仕事に忙殺されている若年男性の優太(井之脇海)と、優太の友人で現在ニートの耕助(金子大地)が主人公で、友人たちもみな仕事や人生に傷を抱えているのが新しく思えました。優太が終わらないタスクに家で一人涙を流すシーンや、自分を気遣う友人の作った食事を食べながら涙ながらに弱音を吐くシーンなど、男だって泣くし、泣いていいとじんわり伝わってくるよう。温かい食のある世界で回復していく優太のまなざしが優しいです。
T:脚本、監督に新進の才能を揃えただけあって、20代の若者が抱える苦悩が等身大に描かれています。重苦しいトーンのドラマながら、一緒に料理をして食べる「晩餐活動」(晩活)の場面は、微笑ましく思えて心が癒やされます。
K:木曜ドラマ「プライベートバンカー」(テレビ朝日)は富裕層の資産を守るお抱えプライベートバンカー(唐沢寿明)という設定に新しさを感じました。資産管理の専門的ノウハウや富裕層ならではの驚くような裏技が提示され、投資ブームの昨今、金融情報としても興味深いです。行きがかりで助手になった鈴木保奈美は、投資はまったくの素人で視聴者目線の役回りですが、彼女が経験を積んで独自の手腕を発揮するようになると、さらに面白くなりそうです。
H:資産やお金の話なのに、あまりイヤらしくないのがいいですよね。大金持ちの資産の奪い合いというと骨肉の争いを想像しますが、設定はその通りなのに落とし所はいつもクスッと笑える良いところに落とし込めていて、家族円満に向かっているようにも思えます。本当の依頼はそこにあるような気もしていますが、今後の展開や資産運用テクニックが楽しみです。

新味な設定と既視感
魅力的な布陣で今後に期待

T:他にはいかがですか?。
Y:夜ドラ「バニラな毎日」(NHK)はお菓子教室が舞台に、そこを訪れる孤独や悩みを抱える人たちの心が、お菓子作りを通して変化していく様子を通して優しい空気が広がります。お菓子の美味しそうな香りまで伝わってくるような、素敵な夜の15分間。永作博美演じる、強引だけれど不思議な魅力のある、関西弁の料理研究家が良い味を出しています。
B:ドラマ9「法廷のドラゴン」(テレビ東京)は「裁判」×「将棋」という突飛で面白い掛け合わせですが、上白石萌音演じる真っ直ぐすぎるキャラクター、そして脇を固める豪華俳優陣によって物語に説得力が増し、不思議と見ていたくなる魅力があります。どのような展開になるのか注目です。
H:解説に将棋の専門用語が出てくるのも面白いですよね。1話の将棋戦で何があったのか、主人公の過去がどのように明らかになっていくのか楽しみです。
T:プレミアムドラマ「TRUE COLORS」(NHK)は目の難病を告知され絶望の淵に立たされた女性写真家(倉科カナ)が、故郷の天草で再生していく姿が色彩豊かな映像で描かれています。「スローな武士にしてくれ」「グレースの履歴」で知られ、脚本(原作も)・監督を務めた源孝志の独自の世界観が心地良いです。
B:土ドラ10「アンサンブル」(日本テレビ)は過去の恋愛にトラウマを持つ弁護士が恋愛関係の訴訟を解決していく+過去の恋愛を乗り越えて新しい恋愛を始めるという二つの軸で構成されていますが、どちらの要素も共感・没入できるまでは至っていない印象でした。松村北斗と川口春奈の胸キュンシーンを眺めるのが良い楽しみ方かも.……?と思いつつ、今後の盛り上がりに期待したいと思います。
T:土ドラ9「相続探偵」(日本テレビ)は「ケイゾク」「SPEC」の西荻弓絵が原作・脚本を手がけた、相続トラブルを専門に扱う探偵の物語です。不貞腐れたような態度の探偵の姿に西荻ワールドの片鱗が見られますが、これからの展開に彼女の本領が発揮されるのでは。
H:「119エマージェンシーコール」(フジテレビ)は第1報を受ける指令管制員(清野菜名)が主人公。パニックに陥った現場からの声を聞き、どうしたら人を助けることができるのか、先輩管制員とぶつかりながらも成長していく姿が楽しいです。現場に赴くという、職業ドラマにはありがちな破天荒感は既視感もありますが、馴染みのない職業は新しい切り口。主人公の経験した火事やお姉さんとの関係がどうなっていくのか、見守りたいです。
T:最後にローカル作品も。ドラマ特区「ふったらどしゃぶり」(毎日放送)は、BLドラマもあの手この手といろいろなパターンが登場していますが、これは間違いメールから始まる物語。最初は誰かは知らずに、メールで心情を吐露し合うふたりの男性。相手が誰か分かる中盤以降、どんな展開を見せるのか楽しみです。
こんなところでしょうか。話題作が豊富でいつになくボリューミーになりましたね。今後の展開が気になる作品ばかりですので、総括編でどう評価が変わっていくのか、ウォッチしていきましょう。

(2025年1月31日開催)
※関東地区で放送された番組を主に取り上げています