★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第32弾★
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、2024年冬の注目作を語ります!
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平安期をこの先どう見せる?
昭和と令和の対比くっきり!
T:2024年も1カ月が経ちました。新年早々に大きな災害もあり、まだ落ち着かない状況ですが、冬ドラマがスタートを切っています。注目作などを語っていきましょう。まずは新しい大河ドラマからでいかがでしょうか。
N:大河ドラマ「光る君へ」(NHK)は、「戦」が描かれることの多いいつもの大河ドラマとは何もかも違って感じます。紫式部/まひろ(吉高由里子)は子ども時代から父親の読む漢文に興味を持ったり、大人のしていることを冷静に見ていたり、宮廷の人々が噂好きであったりと、こういう子ども時代や背景があったからこそ、文才がはぐくまれたのだろうなと思わせる描写などがうまかったです。藤原の男性たちのキャラクターも生き生きしています。
K:幼少期の主人公に降りかかる衝撃的な出来事に、初回から引き込まれました。その後の子ども時代のエピソードが間延びせず、簡潔なのも良かった。男女の機微と権力争いがほどよくブレンドされ、見応えがありそうです。
T:平安時代はドラマではほとんど描かれることがなかったので、まずは貴族たちの暮らしぶりを興味深く見ました。天皇に毒を盛るなど、権力闘争も見応え十分。今後、主人公の恋愛模様がどうなっていくかが楽しみです。
K:そうですね。平安時代の女性の生きざまは大河ドラマとして新鮮なテーマで、確かな史実の少ない時代だからこそ、脚本・大石静さんがどう見せてくれるのか楽しみです。
S:「正直不動産2」(NHK)は、コメディとお仕事情報のバランスが相変わらず絶妙なドラマです。財地(山下智久)がますますウソがつけなくなっていて、本音と建前の落差を楽しく見ています。前シリーズのキャラクターを生かしつつ、新たな競争相手に財地と後輩の月下(福原遥)がどう対峙するのか期待しています。
K:業界あるあるやお仕事ノウハウに留まらず、働くことの意味や姿勢について考えさせられます。家を売り買いすることが人生観と深く関わっていて、顧客それぞれのエピソードを興味深く見ています。嘘がつけない営業マン(山下)と顧客ファーストの若手社員(福原)のコンビが、第2シリーズでさらに意志的に我が道を突き進み、その姿勢がブレないので見ていてスカッとします。
Y:金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS)は、宮藤官九郎ならではの表現でコミカルに現代の風潮を切り取りつつ、「何が不適切なのか」を改めて考えるきっかけを与えるドラマになりそうで、今後の展開に期待します。初回だけでも、「昔はこんなことあった!」と記憶が呼び覚まされる一方、反応のギャップを改めて感じるポイントが多数ありました。不適切なセリフや喫煙シーンが含まれる、という「注意書きテロップ」が劇中2回も表示されたこと自体が、現在の“コンプラ”風刺になっている感じも興味深かったです。
T:「話し合いましょう」と歌って、現在のコミュニケーションのあり方をコミカルに風刺するなど、宮藤官九郎らしさが満載。けれど、ミュージカル風のシーンは好みが分かれるかも。
K:たった40年弱でこれほど時代が変わってしまったことに、改めて驚愕しました。昭和と令和の対比が鮮やかで、スマホもなく不便で不適切だらけなのに、勢いがありパワー溢れる昭和の描き方はさすがクドカン。昭和のおじさんを饒舌に体現する阿部サダヲがはまり役で、いつの間にか不自由になってしまった令和を痛快に斬ってくれそうで期待して見ています。
不器用な男女…滑らかなセリフで
ファンタジー…素直に応援したい
T:「アイのない恋人たち」(朝日放送テレビ)は、恋愛に不器用な現代の男女をうまく描いていると思いました。彼らの姿を娯楽ドラマに仕立てる遊川和彦の手腕はさすが。そして、こんな滑らかなセリフ回しのドラマは久しぶりに見たような気がします。
N:いまどきの恋愛観を遊川和彦が書いているということでまず興味を持ちました。何に対してもどこか本気になれない人、恋愛に臆病な人など、実際にどこかにいそうな若者たちが描かれていて、第1話はあっという間に終わっていました。福士蒼汰が、理想的な王子様的な役ではなく、「3回会った女性とは連絡を絶つ」というキャラクターを演じているのも新鮮です。
I:火曜ドラマ「Eye love You」(TBS)は、相手の目を見たら心が読めるという主人公(二階堂ふみ)は、その能力ゆえに恋愛もできなかったのに、心のつぶやきが「韓国語なので読めない」青年と出会って恋の予感が……。シャボン玉や紅葉なども上手に使ってファンタジー感を盛り上げています。見ていて、素直に応援したくなりますね。
T:この枠らしいラブコメで、初回から大いに笑わせてもらいました。見どころは、やはり韓国人俳優のチェ・ジョンヒョプ。日本の役者にない天真爛漫さが何とも魅力的です。
S:「大奥」(フジテレビ)は、公家のお姫様が将軍様にお輿入れし、魑魅魍魎うごめく大奥へ。姫様があまりにも嫁ぎ先の情報を知らなすぎやしないか、とモヤモヤしつつも、華麗な衣装とロケーションに見入ってしまいました。閉じた世界で御台所(小芝風花)が毅然と生きていく物語を見守りつつ、田沼意次(安田顕)の不敵な企みも気になります。
H:NHKの「大奥」が終わった直後ということもあって、比較は免れません。そのタイミングでの制作には気合いを感じました。ただ、やはりインパクトとしては物足りなかったというのが正直なところ。ストーリーは折り紙付きですから、これからの展開に期待です。
残酷な展開が辛すぎる
激しい絡みにおののく
I:「君が心をくれたから」(フジテレビ)は、夢を追う男女が挫折を乗り越えて……という青春ものかと思ったら、まったく意表を突く展開でビックリ。「五感のすべてを失っていく」というのは、実際に似た病気はありますが、それを主人公・雨(永野芽郁)自らに選ばせるという残酷なストーリーは辛すぎます。死に神のような存在の松本若菜がすべてを知って、雨を案じていることだけが今のところの救いです。まったく予測がつかないこのドラマから目を離せない予感がします。
H:ストーリーが劇的すぎますよね。五感を失うという設定もそうですが、第1話で呼び止めるときに爆竹を鳴らしたり、劇的なストーリーだけに、セリフや行動のディテールをどこまで追求できるかがカギになりそう。正直、このキャストなら王道のラブストーリーを見たかったなぁ。
I:日曜ドラマ「厨房のありす」(日本テレビ)の主人公はレストランを営む若い女性。門脇麦が自閉スペクトラム症(ASD)を上手に演じています。来店客一人ひとりに合わせてメニューを考えて作るなんて現実的じゃないけれど、どれもおいしそうで惹かれます。新たな従業員(永瀬廉)や、死んだはずの母親(木村多江)など、謎もあって展開が楽しみです。
T:自閉スペクトラム症の女性料理人に目が行きがちですが、ゲイの父親や謎めいたバイトの青年など、周りの人物がどう描かれていくのかも楽しみ。製薬会社が絡んだミステリー仕立ての展開も興味深いです。
Y:「月とケーキ2」(フジテレビ)は、前期注目したミニ枠ドラマの続編が今期も続けて放送されています。主演の井浦新と市川実日子のキャストは変わらず、別の人物の話になるという面白い作りです。雰囲気やしぐさなど、巧みな演じ分けに役者の魅力を改めて感じました。6分のミニ枠だからこそできる試みかもしれません。
T:土曜ナイトドラマ「離婚しない男 -サレ夫と悪嫁の騙し愛-」(テレビ朝日)は、物語うんぬんよりも、篠田麻里子と小池徹平の激しい絡みにかなり驚きました。攻めている感じがして、今後も主人公よりもこの二人の描写がとても気になります。
H:SNSやTVerでもバズっていましたよね。たしかにストーリーよりも、過激な描写と話題を呼ぶキャスティングで注目を集めました。ちょっと節操がない感じもしますが話題になることは悪いことではないので、今後の展開次第でさらなる盛り上がりがあるかもしれませんね。
話題性だけじゃない
コミカルだけじゃない
T:そのほか、個別に気になった作品があればお願いします。
N:ドラマプレミア23「SHUT UP」(テレビ東京)は、決して裕福ではない大学生4人の物語で、その中の一人がインカレサークルで出会った男性との間で望まぬ妊娠をしたことからスタートします。フェミニズムに基づいて描かれた作品で、実際にある問題ともシンクロしています。こうした説明だけを聞くと、センセーショナルな話題でひっぱるドラマと思われるかもしれませんが、むしろ世の中にある理不尽な出来事に真摯に立ち向かうような作品になっていると思います。
I:日曜劇場「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」(TBS)は、廃団寸前のオーケストラに、世界的なマエストロが救世主として現れて……という設定が去年放送された「リバーサルオーケストラ」(日本テレビ)とすごく似ていますが、主役のキャラクターが全然違って楽しめます。西島秀俊の指揮は今ひとつですが、人物としての魅力はたっぷりです。
H:確かに似ていますね。今気づきました(笑)。思いがけないアドバイスで演奏がうまくるなど、マエストロの手腕も面白かったです。個人的には、オケよりも主人公の家庭にもっとフォーカスしていくドラマになることを期待しています。
T:土ドラ「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」(東海テレビ)は、今期の拾いもの。昭和の価値観を持った父親の悪戦苦闘ぶりが、コミカルに展開していき何とも楽しいです。多様性が押しつけがましくなく描かれている点も好感が持てます。
Y:「僕の手を売ります」(フジテレビ)は、FODオリジナル制作で、すでに配信リリースされている作品を編集し、毎週1話ずつ放送している形です。映画のような独特の雰囲気が良いなと思ったら、主演のオダギリジョーの映画『パビリオン山椒魚』の監督によるものでした。配信で一気見したいという気もしつつ、毎週の楽しみとしてあえて1話ずつ見ていくつもりです。
K:配信コンテンツが溢れるなか、改めて掘り出し物に出会えた感。オダギリジョーが演じるのは、全国をめぐるプロアルバイター。不思議な設定とロードムービーのようなオフビート感がたまりません。オダギリジョー出演作らしい独特の世界観を、一気見せず一話ずつ見て雰囲気に浸りたいです。
Y:放送をきっかけに配信に誘導される視聴者がどのくらいいるのか、相乗効果があるかといった点も気になります。
T:配信を絡めた作品では「好きやねんけどどうやろか」(読売テレビ)を挙げたい。「初の関西弁BLドラマ」という触れ込みだとか。確かに東京とのカルチャーギャップが楽しく描かれていて新鮮な感じ。一方で、対照的な性格の二人が徐々に心を通わせていくという王道の展開も見ものです。ただ、関西ローカルの番組で、他地域ではTVerやFODでしか見られないというのは惜しいです。
H:同じく「アオハライド Season2」(WOWOW)も挙げたい。配信はすでにシーズン2最終話まで行われています。シーズン1から続く物語は、あと一歩の距離がもどかしい青春そのもの。瑞々しく演じる若手俳優たちにも注目したいと思います。
T:こんなところでしょうか。シリーズものや配信作品の放送、ローカルドラマなどさまざまなドラマがありましたね。最終回を迎え、どのように評価が変わるのか、引き続きウォッチしていきましょう。
(2024年1月26日開催)
※関東地区で放送された番組を主に取り上げています