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【座談会】2024年秋ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第38弾★
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、2024年秋の注目ドラマを語ります!

高度経済成長期と現代の交錯
豪華キャストと映像クオリティに期待値大

T:今年も残すところ2か月となりました。2024年を締めくくる秋ドラマがスタートしています。さっそく注目ドラマなど語っていきましょう。
M:日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS)は脚本が野木亜紀子、主演が神木隆之介、さらに宮本信子、國村隼ほか豪華キャストで、軍艦島を舞台にしたドラマとくれば期待しかないですね。軍艦島の再現セットを始め映像のクオリティの高さや、日本語と英語表記のスタッフロールにも、地上波ドラマ発で世界配信を視野にしたような意気込みを感じました。近年あらゆる日本の社会課題をエンターテインメントとして昇華してきた野木亜紀子が1955年という敗戦間もない戦後と現代を行き来し、炭鉱という忘れ去られた産業や実在する軍艦島を舞台にどんな物語を見せてくれるのか非常に楽しみです。
K:今期一番の話題作ですね。神木隆之介の一人二役、見事な軍艦島のセット、現代と70年前の長崎が交錯する構成など見どころが盛りだくさん。幾重にも物語が張り巡らされたスケールの大きいドラマで、この先が楽しみです。宮本信子演じるいづみの正体、70年前の鉄平と現代の玲央をつなぐのはどんなストーリーなのか、考えるだけでワクワクします。
N:高度経済成長期と現代を行き来したり、宮本さんの「いづみ」という役を見ていると、『タイタニック』を見ているような気持ちになります。日曜劇場は、最近は「半沢直樹」のイメージが強くなっていましたが、こういうものが本来の日曜劇場だったのではと思わせてくれます。
Y:まだ第1話の時点ですが、豪華なキャストの表現力、VFXを駆使した端島の再現に目を奪われました。炭鉱の島で人々が生き生きと生活している空気感が画面から伝わってきます。テクノロジーにより、過去を描くドラマの表現力が高度化していると実感しました。物語は謎が多く、私も今期最も続きが楽しみなドラマです。
T:そうですね。まずは端島(軍艦島)での暮らしぶりや海底の炭鉱を再現した見事な映像に驚かされました。主人公の神木隆之介だけでなく、杉咲花、斎藤工の演技も初回から引き込まれてしまいました。70年前の話を現在とどのように結びつけ、何を描こうとしていくのか、野木亜紀子の脚本も今後とても楽しみです。NHKはいかがでしょうか。

サスペンス、人生の再生、ノスタルジック
多彩なNHKドラマ群に注目

M:土曜ドラマ「3000万」(NHK)は、ひょんなことから大金を手にした夫婦(安達祐実・青木崇高)が主人公。真面目に生活しても報われにくい時代にあって、夫婦の選択を愚かだと思いつつ、他人事とは思えないリアリティがあります。坂道を転がるように悪手に走る夫婦、3000万の行方を追う強奪集団、追う刑事。欺き欺かれ、各回静動入り混じって手に汗握り、息を呑むような展開が続いています。
K:たまたま現金を手にしてしまった普通の夫婦が、カネの魔力に囚われて道を踏み外していってしまう。良識的な庶民が闇に堕ちていくプロセスが恐ろしくてドキドキしながら見ています。複数の脚本家がコラボレーションする「脚本開発チーム」という制作手法にも注目。演出に勢いがあり作り手のパワーを感じます。
N:4人の脚本家が書いているということにまず興味を持ちました。海外ドラマを研究したそうで、時間があっという間に感じるほど、次から次へと出来事が巻き起こる視聴者を飽きさせない作りに生かされていると思いました。NHKは以前も「サギデカ』(2019年)というドラマが特殊詐欺のことを描いていましたが、「3000万」は現代にまん延する犯罪にもつながるような部分があると思います。
H:1話の疾走感は素晴らしかったですね。大金が手元にあることを知り、人間がどう心理的に緊張し、複雑な感情になっていくのか、その葛藤を見事に描いていました。闇バイトなどが取り沙汰されていますが、現代にマッチした物語で、今後の展開が気になります。一番の注目はお金を拾う(奪う?)のが子どもだったという点。現状の物語では大人たちが中心にいますが、後になってキーになってくるような気がしています。演出も視聴者に緊張感を伝える手法を用いて、飽きさせません。
M:脚本や演出、カメラワークが秀逸で見応えがあり映画を観ているような気持ちになります。追い詰められた安達祐実の表情、イラっとさせる夫役の青木崇高の演技もいい。エンドロールも格好良い!
T:ドラマ10「宙わたる教室」(NHK)は、窪田正孝演じる理科教師・藤竹が「ここは諦めたものを取り戻す場所です」と言うセリフに象徴されるように、定時制高校で人生を再生する生徒たちを描いた物語です。重いテーマを扱ったドラマですが、化学の実験シーンが一服の清涼剤になっています。「下剋上球児」「ひだまりが聴こえる」と一作ごとにいい味を出している生徒役の小林虎之介の演技に、個人的には注目しています。
M:一つひとつのエピソードはシリアスですが、今にもこぼれ落ちそうな生徒らが、藤竹との交流を通じて自ら踏みとどまり、学びを諦めない選択をする姿に希望があります。学習障害「ディスレクシア」であったことを本人も周囲も知らずに成長し、苦しみと傷を一人抱えて道を踏み外しそうになっていた岳人(小林虎之介)。幼い頃にオーバーステイで小学校に通えない時期があったアンジェラ(ガウ)には、自分を救ってくれたような教師になるという夢がある。ほかにもヤングケアラーのマリ、起立性調節障害で不登校の佳純など、さまざまなな困難を抱えた生徒たちが描かれています。全国的に夜間定時制を廃止する流れがある中において、学校とは?学びとは?を問うていると感じます。
Y:新ドラマではないですが、プレミアムドラマ「団地のふたり」(NHK)にも触れたい。小泉今日子と小林聡美の絶妙なコンビネーションで、周囲の人々を交えた日常がゆるやかに描かれ、日曜の夜にちょうどよいドラマだと思います。人生はさまざまな出来事と人と人とのコミュニケーションの積み重ねだということを再確認できるような、丁寧な表現に見応えがあります。幼馴染のノエチとなっちゃんの関係性が羨ましいな、という点も含め楽しんでいます。
K:同感です。リアルに同じ年の小泉今日子と小林聡美の会話が秀逸。ほんわかしてくすっと笑えるふたりのやりとりを、いつまでも聞いていたくなります。幼なじみのふたりが紆余曲折を経て実家の団地に戻り、50代の日常を過ごす。互いを知り尽くした家族のような親友のありようと、団地という共同住宅群に住む人々のコミュニティが温かく、ノスタルジックで癒やされます。ジェットコースター的な展開が皆無なのも日曜日の夜にぴったり。ほのぼのした気持ちで眠りにつけます。

魅力的な主人公たち
漫画原作の実写化作品に明暗か

T:連続ドラマW「ゴールデンカムイ-北海道刺青囚人争奪編-」(WOWOW)は映画版の続編ですが、ダイナミックでスピーディーな展開の映画版と違って、刺青囚人たちが一人ひとり丁寧に描かれていて、ドラマならではの良さが溢れています。ロケ地やセット、衣装は映画版と同じクオリティで、何とも贅沢な映像を味わえます。
Y:原作ファンとして、こんなに豪華な実写版を毎週観られるなんて!と心躍らせています。衣装やセット、CG含め、漫画の中の世界が確かに存在している、と見入ってしまうような作りに感心しています。演者がキャラクター本人ではないかというようなクオリティで、特に第2話の萩原聖人の表現力は衝撃的でした。脚本・演出はじめ制作陣の力が伝わってきます。
T:ほかに、民放の作品はいかがでしょうか?
H:ドラマDIVE「つづ井さん」(読売テレビ)はオタクの日常をコミカルに描いた作品。アニメキャラをこよなく愛する主人公がそれぞれ趣味嗜好の違う友人たちと、気ままに推し活ライフを楽しむ様子が描かれます。ジェットコースターのような展開はありませんが、ようやく「推し」という言葉で肯定的に捉えられるようになったオタクたちの世界を優しく描いています。楽しみ方は人それぞれ、それでいい、というメッセージが響きます。
K:「モンスター」(関西テレビ)は敗訴しそうな案件をまるで楽しむかのように引き受けて、強引かつ鮮やかなアプローチで勝訴に持ち込む、趣里演じる若き天才弁護士が痛快。自信満々で生意気なのですが、キュートでチャーミング。この先彼女の本当の意図が明かされていくのかなと、楽しみに見ています。
T:「天狗の台所 Season2」(BS-TBS)は天狗の末裔という現代の兄弟が主人公のドラマの続編。弟役の越山敬達が、1年で背が伸び、声が太くなったのにはちょっとびっくりでした。しかし、素材を生かし手間をかけて作る料理やシンプルでスローなライフスタイルなど、作品の持つ良さはそのままで、映像も美しく、まさに心を洗われるドラマです。
Y:金曜ナイトドラマ「無能の鷹」(テレビ朝日)は朝ドラ「おむすび」(NHK)と同じく根本ノンジの脚本。原作漫画の雰囲気はそのままに、コントや舞台のような表現も取り入れ、独特の面白い空気を作り出していると思います。見た目はデキる主人公に菜々緒がぴったり。コミカルななかにも、仕事でこういうことあるよな、といったシーンや、ドキッとするようなセリフも散りばめられており、脱力系お仕事ドラマとして注目です。
H:本人は何もしていないのに活躍したり、相手が勝手に雰囲気に騙されて深読みした結果自体が好転していく様相は見ていて痛快。「人は見た目が9割」ではないけれど、周囲を振り回しながらも憎めない主人公は現代にも多そう(笑)。随所に見た目で人を判断することに対する皮肉が込められているのも面白い。菜々緒はキャスティングの妙でしたね。
K:金曜ドラマ「ライオンの隠れ家」(TBS)も挙げたい。自閉症スペクトラムの弟と暮らす兄。多様性をテーマにした家族の物語かと思いきや、そこにライオンという少年が現れて、一気にミステリー展開へ。先が読めず引き込まれます。弟想いの兄(柳楽優弥)、生きづらさを抱える弟(坂東龍汰)、そして身元不明のライオン少年(佐藤大空)、いずれも演技巧者で目が離せません。特に柳楽優弥のすべてを包みこむような愛情あふれる兄キャラクターが魅力的。3人の行く末を見守りたいです。
T:「スメルズ ライク グリーン スピリット」(毎日放送)は1990年代の地方都市の瑞々しい高校生の姿が、ドライブ感のある音楽をバックに溌剌と描かれていて、往年の日活やATGの青春映画を彷彿とさせます。ただ、性の指向がドライに綴られているあたりは、極めて現代的なドラマだと思いました。
N:「若草物語-恋する姉妹と恋せぬ私-」(日本テレビ)は「虎に翼」後のドラマとして、しっかりとフェミニズムにも取り組んでいるのがわかって、毎週楽しみにしています。ちょっと教科書的な部分はあるけれど、わかりやすく気軽に見れる空気を保っているので、フェミニズムに興味がない人にも、取っ付きやすくて良いのかなとも思いました。
H:ドラマイズム「その着せ替え人形は恋をする」(毎日放送)はマイナス面で話題になってしまいました。改めて人気マンガ原作の実写化の難しさを感じています。ただ、私はマンガもアニメも見ていなかったのですが、気になる点はありました。人形作りには真剣な主人公が、「人形作りが夢なのか」と問われた時に、嘘だとしても本当に「しょうがなく」という言葉を使うのか…。ファンは単に原作と表現が違うと指摘しているのではなくて、キャラクターの本質をないがしろにされていることに怒っているのだと思います。この作品自体がアニメ作品に愛をもってコスプレをするという物語なので、この辺りは制作陣がしっかりと受け止めるべきだと思います。楽しめている部分はあるので最後まで見届けたいと思いますが…。
T:連続テレビ小説「おむすび」(NHK)がスタートしていますが、どうでしょうか。
Y:私は福岡出身なので、方言や街の景色を懐かしく見ています。天神と糸島の往復回数の多さ(交通費が心配)や速度、若者の一人称が「ウチ」なこと(必ずしも多数派ではなかった気がするのですが)など、気になるところはいろいろありますが…前作とは比較することなく、ゆっくり見る朝ドラとして楽しみたいところです。次週から神戸の震災なども描かれるので、物語の展開の中で登場人物たちの心の動きがどう表現されるのかに注目したいと思います。
T:ギャルの話にはあまり共感できないのですが、今後の栄養士の話が広がりを見せていくことに期待しています。個人的には、松平健と北村有起哉が演じる親子ゲンカが、リアリティがあって楽しみにしています。
今期はNHKの作品に注目が集まっているようですね。年末に向けて、各ドラマがどのように展開していくのか、引き続きチェックしていきましょう。

(2024年10月26日開催)
※関東地区で放送された番組を主に取り上げています