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【座談会】2022年夏ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第20弾★

全国的に新型コロナウイルス感染者数が急増するなか、夏ドラマが始まりました。
マイベストTV賞プロジェクトメンバーが2022年夏ドラマ注目作を語ります!

深みあるセリフ、時代映すセリフ
そわそわ…次回が楽しみに

T:夏ドラマがスタートしました。全体的に前クールが苦戦しただけに、今クールへの期待値も高くなっているかもしれません。語っていきましょう。今回からKさんにも加わっていただきます。
Y:「初恋の悪魔」(日本テレビ)は、坂元裕二脚本の独特な魅力が満載で、序盤から目が離せません。濃すぎるほどのキャラクターを持つ登場人物たちの人間関係の変化、散りばめられる謎、事件の真相など、気になる要素が多種多様に含まれ、印象的なセリフと相まって1時間があっという間。次回を早く見たい!という感じです。
T:その通りですね。坂元裕二ワールドが全開。「負けてる人生って、誰かを勝たせてあげてる人生です。最高の人生じゃないですか」など、さりげないセリフの中に味わいがぎっしりと詰まっている。コミカルな会話もやりとりも心地よく、落語を見ているような感覚になります。仲野太賀は役者としても力量をいかんなく発揮していて、彼の演技だけでも一見の価値ありです。
H:やはりキャラクターが魅力的ですよね。林遣都演じる鹿浜が好意を「これは殺意だ!」と言い張りながらも、彼女と自分だけコーヒーカップをいい品にしたりするのは、キャラクターとしていとおしいですし、その辺のさじ加減が絶妙に面白い。俳優陣の演技も抜群です。これからの展開も気になりますし、目が離せませんね。
Y:先の展開が気になる作品は、一気見や見逃しのニーズをうまく掴むためのきっかけになると思います。有料サービスへの誘導はもちろん必要ですが、例えば無料モデルも見逃し視聴の期間を1週間に限定せずにうまく利用するなど、視聴者を取り込みつつマネタイズもできるような仕組みを考えることもできる気がしますね。
I:「魔法のリノベ」(関西テレビ)は、時代の要請に上手に応えた作品だと思います。小さな工務店に勤める波瑠と間宮祥太朗の凸凹コンビが、顧客の潜在的な要求を見出していくストーリーで、二人のセリフがよく時代を映しています。ステイホームで自宅にいる時間が長くなり、リモートワークで自分のスペースの確保を余儀なくされた人が興味深く見ているんじゃないでしょうか。
N:いま一番楽しみにしている作品です。ヨーロッパ企画の上田誠さんの脚本もあってか、とぼけた空気感もいいし、「鎌倉殿の13人」(NHK)でもインパクトを残している金子大地が、このドラマでもなかなか嫌味な役でいいですね。
S:気になったのは、オーナーの悩みをリノベで解決という1話完結の展開が、やはり住まいを題材にした前クールの「正直不動産」(NHK)に似ていて、二匹目のドジョウという印象でした。でも、シビアな建設業界なのに、どこかユルい「まるふく工務店」の面々に、だんだんと取り込まれていきました。間取り図面が実物に立ち上がっていく画作りや、遊び心ある映像が楽しいです。それと、某リフォーム番組のオマージュでしょうが、「なんということでしょう」の多用がズルいです(笑)。
K:金曜ドラマ「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」(TBSテレビ)は、 新井順子(プロデューサー)×塚原あゆ子(演出)らの黄金コンビが放つオリジナルドラマ。マチベン事務所が舞台で、法律が身近に感じられます。取り上げられる事案が生活に密着していて、すっとテーマに入って行ける。中村倫也と有村架純のひとひねりあるキャラ設定と、凸凹バディ感も楽しい。さらに赤楚衛二が加わって、人間関係の成り行きにも期待しています。
S:初回はギクシャクしていたバディの関係性も、だいぶこなれてきましたね。社会問題をタイムリーにとらえていて、とくに「ファスト映画」を取り上げた第3話は、匿名SNSが商業映画に及ぼす脅威にも触れ、物語から作り手の憤りや思いが伝わってきて、考えさせられました。

本格派もチープな設定も
ざわざわ…心を揺さぶる

S:「純愛ディソナンス」(フジテレビ)は、教師と生徒の禁断の恋が5年後、思いもよらぬ再会で動き出す。パッとしないヒロインと、闇堕ちした元教師の周囲には、「反社」まがいの社長やら、作家に転身した同僚教師やら、うさんくさい起業家やらが…。見ていて心がざわざわします。古典的な恋愛サスペンスは懐かしく、新鮮でもあります。
H:結構楽しく見ていますね。すぐに5年後になってしまったのですが、富田靖子の母親役はもっと見ていたかった(笑)。「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」(テレビ朝日)で演じた過保護な母親を静とすると、今回は常に男性といたり、職員室に乗り込んで抗議したりと動の母親役で、どちらも問題があるクセの強い役でしたが、今回のほうが画力は強い。素晴らしい演技力ですね。後半絡んでくるのか、波乱がまだありそうで、楽しみです。
T:俳優陣では、今期も「泳げ!ニシキゴイ」「六本木クラス」と引っ張りだこの光石研さんが、このドラマでは気のいい感じは一切見せず、超コワいです。
K:話に出た木曜ドラマ「六本木クラス」(テレビ朝日)は、見た後、オリジナル版「梨泰院クラス」を復習して二度見したくなります。これって新しいドラマの楽しみ方かもしれない。実際にNetflixの視聴も伸びているようです。韓国版・イソ役のキム・ダミには唯一無二の感があったけれど、日本版の葵役・平手友梨奈もかなりいい演技をしています。抑えたトーンの話し方と独特の声、新(竹内涼真)を見つめる眼がいい。頑張れ日本チームって感じで見ていますね。
H:Netflixで韓国版は見たのですが、どうしても日本版は見る気になれなかったんですよね……。全話公開になったら一気見しようかなと思っています。
I:憲法に明記するか否かで注目が集まる「自衛隊」が舞台の「テッパチ!」(フジテレビ)。もし自衛隊を盛り上げることが目的だったら大失敗だと思います。なにより、落ちこぼれ、はみ出し者しか入ってこないという設定って、自衛隊にとっても不本意では。女性も一人ぐらいは出さないと、と思ったのか、紅一点で出演している白石麻衣にも違和感があります。上官らしさは中途半端で、隊員の町田啓太との絡みは極めてチープ。この先の展開、少しは良くなるのかどうか…。
N:自衛隊をどう描くか以前のところで、引っかかるところばかり目につきます。やたらと男性隊員のシャワーシーンを見せたり、女性上官との恋のシーンも、古い少女漫画をそのまま唐突に持ってきているよう。カラオケやダンスのシーンも、視聴者へのアピールなのでしょうが、逆効果になっている気がします。
I:すでに最終回を迎えた土曜ドラマ「空白を満たしなさい」(NHK)は、自殺した主人公(柄本佑)が蘇って自分の死の真相に迫るというストーリー。最初は彼にしつこく絡みつく謎の男(阿部サダヲ)の悪意あるセリフと気味の悪い雰囲気に辟易していたけれど、現実の闇を鋭く抉りだしている彼のセリフにだんだん引き込まれるようになりました。主人公も同様で、毛嫌いしていた男への理解を示すように…おお、これでハッピーエンドかと思ったら、また新たな問題が…。最終回が楽しみでしたね。
N:小説原作ものをNHKがやるということで、変なアピールもなく、かつ、続きがどうなるのか気になって見逃せませんでしたね。

サッパリ・ふんわり・どっしり
じわじわ…期待が高まる

T:その他、個別に気になった作品があればお願いします。
K:展開についていけず引き気味だった連続テレビ小説「ちむどんどん」(NHK)は、最近ちょっと面白くなってきました。恋愛音痴の暢子(黒島結菜)は、好意を寄せる和彦(宮澤氷魚)に婚約者がいるとあっさり諦めちゃう。でも、めぐりめぐって和彦と心を通い合わせると、今度はズバッと自分から「結婚して」。超サバサバしていて前向きで、湿度ゼロ%の快晴の沖縄の空って感じです。朝ドラヒロイン史上、最もサッパリ系かもしれない暢子の人生がこの先どうなるのか、見届けたくなってきました。
Y:ドラマ25「晩酌の流儀」(テレビ東京)は、晩酌を日々の最優先事項とし、おいしいおつまみと最高のお酒を追求する主人公(栗山千明)。家飲みばかりの今日このごろ、メニューが参考にもなり、週末にゆるりと見るのにちょうど良い内容です。ただ、どうしても気になるのが、おいしいお酒を求めるあまり、水分を制限している様子。サウナのあと水一滴飲まず買い物をして帰宅したり、暑い日に午後3時以降水分を控えたりと、熱中症などの体調不良が心配になってしまいます。気持ちは分かるところですが、もう少し表現に配慮があってもいいのではという気がします。
S:「泳げ!ニシキゴイ」(日本テレビ)は、本家NHKをしのぐ朝ドラ感が心地よく、今期イチオシです。遅咲きの芸人コンビ・錦鯉の二人の半生記。のどかな昭和の暮らしが手練れ感溢れるキャスティングにより生き生きと描かれ、平凡な日常のいとおしさにしみじみしています。そうかと思うと、物語が時代を行きつ戻りつしたり、急に副音声ベースの回があったりするなど実験的でもあり、1話が5分ほどながら、毎回ワクワクしています。
T:私からはBSの2本を。「シネコンへ行こう!」(BS松竹東急)は、シネコンが舞台のお仕事ドラマ風の作品。シネコンではどんな仕事をするのか、どんな客が来るのかなどが描かれ、さまざまな映画の小ネタも盛り込まれていて、映画好きな人なら「なるほど」とうなずきながら楽しめます。コメディ仕立てで気軽に見られるところも良いです。「オカルトの森へようこそ」(WOWOW)は、堀田真由や筧美和子などを起用し、特撮も安っぽくないA級的な作りをしながらも、あくまでB級の馬鹿馬鹿しい味わいを追求しているところが心地よい。今後登場するイケメン俳優がどのように絡んでくるかも楽しみです。
S:日曜劇場「オールドルーキー」(TBSテレビ)は、サッカー一筋で世の中を知らなさすぎる、お人好しの元アスリートを綾野剛が好演しています。諦めから再生を目指す主人公の亮太郎に、自分を重ねて共感したり。スポーツには夢があるという世界観が一貫していて、気持ちよく見られます。
H:反町隆史演じる高柳社長が人気アナウンサーだった亮太郎の妻(榮倉奈々)のファンというのも、福田靖らしい設定でエッセンスとしていいですよね(笑)。
N:ドラマ10「プリズム」(NHK)は、1週目はちょっと物語が動かないなと思ってしまいましたが、2週、3週と進むと、それなりに見えてくるものが出てきました。期待しています。
T:作品ごとに評価がはっきり分かれましたね。最後までこれが続くのか、最終回を迎えて評価が変わるのか、総括編が楽しみですね。

(2022年7月29日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています