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【座談会】2022年春ドラマまとめ編

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第19弾★

6月の観測史上最高気温を記録する猛暑が続くなか、春ドラマが終了しました。
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが2022年春ドラマ注目作の感想を語ります!

良質な真っ当コメディ
「起こりうる未来」見応え

T:短い梅雨が明け、春ドラマも続々最終回を迎えていますので総括していきましょう。
N:「正直不動産」(NHK)は不動産の知識を得られることも毎回楽しかった。山下智久演じる永瀬財地と、市原隼人演じる桐山というふたりのライバルが、徐々に相棒のような関係性になっていく様子もよく描けていたと思いました。
S:営業トークで嘘がつけなくなった永瀬は、そのおかげで誠実さを取り戻す。真っ当な展開をコメディとして描いていて楽しめました。山Pがコメディドラマで見せる「間」のセンスは絶妙だと思います。
T:不動産屋のバリバリの営業マンが、たたりで嘘がつけない体になってしまう設定が面白かったですね。不動産業界の裏側と人情話が絶妙に絡んで、笑いあり、ホロッとする場面ありの良質のエンターテインメント作品になっていました。
S:最終回の翌週は、「感謝祭」と銘打って、メインキャストと脚本の根本ノンジさん、チーフ演出の川村泰祐さんが見どころや裏話を語っていました。ドラマの振り返りができて面白かったです。
Y:まだ放送中ですが、同じNHKの朝ドラにも触れておきたいです。連続テレビ小説「ちむどんどん」(NHK)は、子ども時代はまだよかったのですが、その後学生、社会人になるにつれて、登場人物の言動や行動、物語の展開に「?」が多く頭に浮かぶようになり、結局ついていけず脱落してしまいました。期待を持って視聴しはじめたのですが、久しぶりに朝ドラを見ない日々です…。
I:私も、今回の朝の連ドラにはガッカリ。どんどん展開していくけれど、どんどん気持ちが引いていきました。逆に、夜ドラ「カナカナ」(NHK)にはハマりました。夜の15分間、愛らしい子役と、周りの人の不器用な温かさに癒やされていました。
Y:土曜ドラマ「17才の帝国」(NHK)は、日本の経済停滞が深刻になり「Sunset Japan」と呼ばれる、という「起こりうる未来」を舞台にしたSFドラマで、自分の生活の延長線上で捉えられるテーマが散りばめられていて、見応えがありました。全5回があっという間で、さらに細かい場面を、時間をかけて見てみたかった気もします。AI(人工知能)による政策判断や亡くなった人の再現など、AIを取り巻く倫理的な課題について取りあげられていた点が非常に興味深かったです。

暑苦しい!でも爽快感!
リアルな痛み…でも前向き

S:木曜ドラマ「未来への10カウント」(テレビ朝日)は、高校生の青春群像劇に花を持たせたかったのか、桐沢(木村拓哉)の再起の物語が中途半端になったように思います。かといって、ボクシング部員の描き方も消化不良の感が。特に、部内をかき回す桃介(村上虹郎)のエピソードはもっと盛れたのではないかと。キムタクは脇に回らず横綱相撲を取ってほしいと、改めて実感しました。
H:そうですね。もともとボクシングの映像化は難しいと思っていたけれど、それ以上に、ストーリー展開が中途半端だった。亡くなった最愛の妻のエピソードもあっさりしていたし、桃介や他の部員の葛藤も同様。全体的に消化不良でしたね。
I:ただ、とにかく満島ひかりのキャラが光っていました!
T:「ナンバMG5」(フジテレビ)は、ヤンキーをやめて普通の高校生になりたいと思っている主人公。2つの顔を演じ分けた間宮祥太朗の熱演ぶりが何とも楽しかった。友情や家族愛も暑苦しく描かれていて、逆にそれが爽快感を生んでいた。
H:個人的な今季ナンバーワンです。キャストも適材適所で、とてもよかった。単にヤンキーと普通の高校生の二重生活を描くだけでなく、各話のテーマもしっかりしていた。語り役の愛犬・松もいい味を出していましたね(笑)。
N:ドラマイズム「明日、私は誰かのカノジョ」(毎日放送)は、人気漫画原作のドラマ化。レンタル彼女やパパ活をしている大学生や、ホストにはまっている女性などが登場します。ファンタジーや夢見る要素はまったくなくて、今の若い女性たちのリアルな痛みを、誇張せずに描いているところが凄いです。
H:ホストにハマっていく萌を演じた箭内夢菜はいい発見だった。あえて「落ちる」という言葉を使わせてもらうと、ホストにハマり風俗に落ちていくのは正直いって全然理解できないんだけど、これがリアルと言われると納得はできるんですよね。他の登場人物もそれぞれが前向きに生きていくラストは凛々しく、現代を映した良作でした。
S:水曜ドラマ「悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?」(日本テレビ)は、痛快出世物語かと思いきや、だんだんとお仕事道徳ドラマにシフトしていきましたね。真面目すぎるきらいはあるものの、仕事をめぐる男女格差や、ワークライフバランスなどの問題を取り上げ、社員の数だけ働き方はあっていい、というメッセージが気持ちよく伝わりました。マリリン(今田美桜)の頑張りに感化され、先輩社員の小野(鈴木伸之)が、それまで抱いていたマッチョな会社観を見直すようになる展開は、現実でもそうあってほしいな、と思いました。

謎展開…クセもの大団円
松重豊が主役を食った!

T:こんなところでしょうか。その他、個別にあればお願いします。
Y:NHKからもう一つ、「星新一の不思議な不思議な短編ドラマ」(NHK BSプレミアム)は、各回のクオリティを存分に楽しむことができ、とくに一部で話題にもなったコウメ太夫出演の「逃走の道」は、良質な舞台を見ているようでもありました。このシリーズを見て、配信とも親和性が高いと考えられる15分完結ドラマはフォーマットとして使い勝手がよいのでは、と改めて思いました。例えば、ミュージックビデオの拡大版や長編コントなどをドラマシリーズ化するとさまざまな層のファンに見てもらえるのでは、などとアイデアが広がります。
I:同じNHKで、「今度生まれたら」(NHK BSプレミアム)は、内館牧子らしい作品でした。仲のいいはずの夫婦が破綻して、心が通じていないと思えた夫婦(松坂慶子と風間杜夫)が最後はいい感じになるストーリーには意表を突かれました。
S:木曜ミステリー「警視庁・捜査一課長season6」(テレビ朝日)の最終回、メタバースの世界で展開する物語がまったく理解できませんでした(苦笑)。作る側もメタバースをわかっているのかどうか、謎です。ともあれ、毎回クセがスゴかったドラマの大団円に相応しかったです。
I:日曜劇場「マイファミリー」(TBSテレビ)は、「誰が犯人?」という興味で最後まで見たけれど、全然いただけなかった。誘拐されたわが子を救いたいという動機が発端だったわけだけれど、そのために、トラウマを残す誘拐犯罪を友人の子どもに仕掛けるという筋書きは不愉快でした。日曜日のあの枠は、もっと楽しめるものを持ってきてほしいですね。
H:序盤で視聴離脱組だから何とも言えないけれど、真犯人捜しで引っ張るドラマは「テセウスの船」(2020年、TBSテレビ)でもそうだったように、最後がっかりするケースが多い。序盤と最終回だけ見るという非常に酷い見方をしてしまったとはいえ、後悔はないかな(笑)。
I:火曜ドラマ「持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~」(TBSテレビ)は、上野樹里と田中圭のカップルよりも、松重豊と井川遥のカップルのほうが素敵で応援した。松重豊は芸達者で好きな俳優だけど、まさか恋愛ドラマで主役の一人になるとは!
T:今期は、全体的に見続けたいと思うようなドラマが少なかったように感じますね…。
N:総括には早いですが、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK)は、始まってから、どの回とも面白いです。今は源頼朝の死を描いていますが、どのキャラクターにも、悪の一面もあるし、かといって人間らしい部分もあります。歴史上の人物も、普通の人であったし、普通の人が政治や戦にかかわると恐ろしい一面を出してしまうんだなと実感します。この先も楽しみでなりません。
T:すぐに夏ドラマが始まります。引き続き、チェックしていきましょう。

(2022年7月1日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています