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【座談会】2022年春ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第18弾★

3月に無料BS局が3局誕生。前クールの関西テレビ“月10”枠に加え、NHK帯ドラマ「夜ドラ」、フジテレビ“水10”などの新ドラマ枠が誕生しました。
マイベストTV賞プロジェクトメンバーが春の注目ドラマを語ります!

仕事は嘘をつかない
仕事で嘘はつけない

T:4月に入り春ドラマがスタートしました。コロナ禍で一部の制作に遅れが生じ、放送開始が延期になるなどありましたが、今回も語っていきましょう。
S:水曜ドラマ「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」(日本テレビ)は、劣等生ながら行動力は半端じゃない新入社員のマリリン(今田美桜)を見ていると元気が出ます。リメイク作品ですが、世相に沿ったアップデートがされていて、会社に馴染めず経験不足に悩むコロナ下入社組のエピソードは、勤め人にとって身につまされるものがありました。大企業を舞台に、毎回マリリンが違う部署に配属される“会社ダンジョン”な展開で飽きさせませんし、今後は、できる社員ながら備品係に甘んじている峰岸さん(江口のりこ)がどう逆襲に転じるかが待ち遠しいです。
N:ヒロインではないのですが、コロナ下に入社した女性社員の、誰にも怒ってもらえないし、何も教えてもらえない、というリアルな部分には引き込まれました。逆にヒロインのマリリンは明るくてガッツがあって、それはそれでヒロインらしくていいのですが、取引先の社長の前で突然海に飛び込んで、「君、面白いね」と認められ仕事がうまく進むというような展開は、昔のお仕事ドラマやラブコメディっぽいなという感じがしてしまいました。
S:付け加えるなら、楽しく見てはいるのですが、ドラマの根底にあるのは男社会で成り立つ会社組織への異議申し立て。何十年も前から語られているテーマが今もまかり通っていることに複雑な思いがします。
I:金曜ドラマ「インビジブル」(TBSテレビ)は、謎の犯罪者(柴咲コウ)とはみだし熱血刑事(高橋一生)、その二人の関係を追う監察(桐谷健太)との関係が緊張感を生んでいて、展開が楽しみ。柴咲コウの目力と雰囲気が強い魅力を放っています。
H:見ていて、どうしても人気海外ドラマ「ブラックリスト」がチラついてしまうんですよね。そうなるとスケールも展開も、今一つ物足りない。俳優陣も悪くはないですが、どうしても入っていけない自分がいますね……。
S:ドラマ10「正直不動産」(NHK)は、脚本が「ハコヅメ!」の根本ノンジで、期待どおりのテンポよい展開で楽しめます。嘘がつけなくなった不動産会社の営業マンという寓話に、家を売る人・貸す人・借りる人、それぞれの人間模様が絡み、45分があっという間。不動産の豆知識が盛り込まれていて、知らないことばかりで勉強になります。
N:山下智久が演じる営業マンが、決して善良なキャラクターではなく、契約のためには嘘をつくというところから、あることをきっかけに嘘がまったくつけなくなってしまい、そのことで逆に良い仕事ができるようになっていく。不動産のあれこれを知られるのも面白いですね。
S:木曜ドラマ「未来への10カウント」(テレビ朝日)は、網膜剥離でボクシングの道を断たれた桐沢(木村拓哉)が母校のコーチに舞い戻り、再生を果たしていく。世をすねた大人とひたむきな高校生部員と思惑だらけの教師たちが織りなす物語に引き込まれています。満島ひかりをはじめ、生瀬勝久、八嶋智人、富田靖子と、“教師役のベスト盤”みたいなキャスティングがツボです。
H:ここからどうなるのか楽しみですね。ボクシングを扱うとどうしても汗臭い“スポ根”を想像してしまうけれど、ボクシング部員の生徒には女子もいたり、令和版にどうアップデートしていくのか注目したいと思います。

間尺に合わない?主役かけ持ち
時代に合わせた?短尺が続々

T:新しい月9はどうですか?
S:「元彼の遺言状」(フジテレビ)ですが、ヒロインの相棒に扮する大泉洋にNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の源頼朝がチラついてしまい、どうにも集中できません。主役級の連ドラかけ持ちはやめてほしいです。
I:まったく同感です。「恋なんて、本気でやってどうするの?」(関西テレビ)「探偵が早すぎる 春のトリック返し祭り」(読売テレビ)の広瀬アリスも同様です。
N:その「恋なんて、本気でやってどうするの?」は、恋愛に興味のないヒロインの物語。彼女が高校時代から密かに思いを寄せていた会社の先輩が突然結婚して傷心し、行きつけるようになっていたレストランのイケメンに慰められる。第1話の最後では、そのイケメンに「僕の部屋、2階なんだ、部屋でなら思いっきり泣けるよ」と言われていて、そんなレストラン怖すぎると思いました。第2話からいろいろ事情が描かれるのかもしれませんが……。
I:「探偵が早すぎる」も、ストーリーが分かりにくいうえにギャグ的な演出が濃すぎて、ノリについていけない感じです……。
T:日曜劇場「マイファミリー」(TBSテレビ)は、キャストが豪華なところは日曜劇場らしくて、演技を見る楽しさがあります。今作も視聴率が好調ですが、物語を引っ張るために少し無理がある展開になっている気がします。今後、見応えあるエピソードが織り込まれることを期待します。
H:その通りですね。犯人との交渉もちょっとリアリティがない。妙に時間の猶予が長くて、そんなに時間くれるの?とか笑ってしまう部分もある。これからの展開次第だけど、結局オチは想像の範疇を超えないような気がしています……。誘拐もののドラマも数多く作られているなかで、新しい形をどう作っていけるかが勝負だと思いますね。
T:3月にBS3局が誕生し注目を集めていますが、BS作品ではどうですか?
Y:「星新一の不思議な不思議な短編ドラマ」(NHK BSプレミアム)は、15分×20本、原作のショートショートの魅力を生かした作りだと思います。毎回の出演者も豪華ですね。短尺動画の視聴に慣れるなど、視聴者の1コンテンツあたりの視聴時間が短くなる傾向にあるとの見方もあるなか、完結型の15分シリーズドラマは現在のニーズにあった形式のひとつかもしれません。
T:土曜ドラマ「家電侍」(BS松竹東急)は、江戸時代に現在の家電が突然やってくるという物語。唐突な設定ですが、主演の滝藤賢一をはじめ役者がみんな大袈裟なほど真面目に演じているので、そこが笑いのポイント。新しいBS局ならではの風変わりなエンタメドラマとして、最後まで見てみたい作品ですね。
K:同じく月曜ドラマ「いぶり暮らし」(BS松竹東急)は、同棲3年目のカップル(志田未来、泉澤祐希)が休日の日曜日に燻製をつくって味わうドラマ。簡単に調理法を紹介し、料理もじっくり映し出す。二人の笑顔がはじける場面をのんびりと楽しめます。大阪・朝日放送テレビの「ドラマL」「ドラマ+」や毎日放送の「ドラマ特区」をきっかけにふたたび広がりを見せる30分ドラマは、YouTubeの短時間動画に慣れ親しんでいる若年層にとってもハードルが低く、全体に緩やかな点がいい。新BS局の開局で、30分ドラマの良さが私たち視聴者にさらに浸透していく気配を感じます。

セリフの妙で見るか
配役の妙で見るか

T:そのほか、個別に気になる作品があればお願いします。
I:火曜ドラマ「持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~」(TBSテレビ)は、演技力抜群の松重豊と上野樹里が父娘役。第1話では、松重が再婚活動を始めるまでの経緯や、「妻が死んだときに、妻と一緒にいるときにしかいない自分も死んだ」と言ったセリフには胸を衝かれました。今後の展開が楽しみです。
Y:連続テレビ小説「ちむどんどん」(NHK)は、前作「カムカムエヴリバディ」最終週の密度の濃さの余韻があり、次の作品にすぐに目が向くだろうか?と心配もあったのですが、主人公と兄弟の健気な明るさと沖縄の素晴らしい景色が、新しい物語の始まりにピッタリで気持ちが切り替わりました。早くも登場人物たちは困難に直面していますが、それをどのように乗り越えていくのか楽しみに視聴したいです。
T:NHKでは夜ドラ「卒業タイムリミット」(NHK)を挙げたい。若者向けの新しい枠のドラマということで期待して見ました。たしかに主人公の井上祐貴をはじめとするイケメンたちには若い女性はときめくかもしれないけれど、全体的にはミステリー仕立てなのでちょっと重いテイスト。映像的にももう少し遊んでいいかもと思いました。
K:月~木曜、夜の15分帯という新しい取り組み。15分という尺が思った以上に見やすく、生活のリズムに合っていると感じます。
H:「やんごとなき一族」(フジテレビ)は、コロナによる制作の遅れで1週遅れでスタート。やんごとない大富豪に庶民の主人公(土屋太鳳)が嫁いで、しきたりや固定概念で縛られた華麗なる一族に立ち向かっていくというシンプルなストーリー。やっぱりこういう分かりやすい物語は安心感がある。第1話はなんと言っても倍賞美津子さんの迫力!さすがでしたね。土屋太鳳も持ち前の品の良さがきらびやかな世界に引けをとらず、いいキャスティングだったと思います。見続けたい作品の一つです。
I:ツッコミどころ満載の時代がかったストーリーですが、土屋太鳳がハマり役で吸引力を発揮していますよね。
Y:ドラマ25「ソロ活女子のススメ2」(テレビ東京)は、政治家や社長役、そして直近では大河ドラマでの江口のりこも迫力があって魅力的ですが、ソロ活女子のようなゆるりとしたキャラクターの存在感もまたいいよな、と改めて思いながら見ています。ドラマは第2弾になりますが、ソロ活の可能性を広げるテーマが毎回幅広く取り上げられて興味深いです。
H:あと、制作が遅れているようで早々に2話が振り返り回でちょっとがっかりしたんですが、「ナンバMG5」(フジテレビ)は、「踊る大捜査線」などの本広克行監督が演出とあって、注目しています。
S:今期は恋愛が眼中になかった女性が恋に目覚めるとか、街の有力者に嫁いだ庶民の奮戦記とか、令和とは思えない“回帰っぷり”ですよね。
T:まだスタートしたばかりですが、各ドラマがどんな展開になっていくのか、今後もチェックしていきましょう。

(2022年4月22日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています