★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第16弾★
全国的にオミクロン株が急拡大し、芸能人の感染のニュースなども日々流れるなか、冬ドラマが出揃いました。今期はどんな楽しみが待っているのか、マイベストTV賞プロジェクトメンバーが注目作を語ります。
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賛否両論と言うなかれ
T:さて、冬ドラマが出揃いました。注目作品を語っていきましょう。
I:「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ)は好きですね。トラブルに巻き込まれる主人公・整(菅田将暉)が、論理的な思考で謎を解いてみせ、相手を納得・感服させるけれど、決してヒーロー然としていない。どこか不器用でちょっと孤独な大学生を演じる菅田が魅力的です。
S:今期いちばん楽しみにしているドラマです。驚きの観察眼で相手の本質を見抜き、そこに優しい言葉をかける。説教強盗ならぬ説教容疑者、もしくは説教人質とでも言いましょうか。回を重ねるごとに、めんどくさそうな整に親しみがわいてきます。くせ毛全開のどアップでとうとうと語るシーンも間がもつなあ、と思って見ています。
Y:漫画原作モノにはキャストへの賛否両論がつき物ですが、原作と実写それぞれの良さに目を向けて、作品自体を楽しめたらよいのではという気がします。世の中や人を独特の客観的視点で見る主人公の台詞には印象的なものが多く、ドラマでの表現も楽しみです。
T:謎解きの面白さもさることながら、映像が素晴らしく、独自の世界観を作っています。余白も味があり、どこを切り取っても絵になる。
S:ダークな色調の映像美や、有名どころのクラシック音楽引用しまくりの劇伴など、令和のけれん味が爆発していますね。
N:第1話はテンポもメッセージもいいなと思ったのですが、2話以降、音楽の使い方が気になって仕方がなかったです。主人公の整のセリフに壮大に音楽を乗せるので「ここからいいこと言うぞ!」という演出がすごすぎて、いいこと言うドラマみたいになっていたり、何度も何度も音楽で盛り上げようとするので、開始30分でもうエンディング?と思ったりしてしまうところもありました。
H:私もあまり楽しめなかったというのが正直なところ。全編通して謎解きが会話で行われるので、場所が固定される。1話目は取調室で2話目はお屋敷、主人公の動きがないぶん、そこでの演出に力を入れているのだろうけれど、やはり主人公が能動的に動いていく形のほうが毎週見たいと思うんじゃないかな。
T:新設された月10枠はどうですか?
H:「ドクターホワイト」(関西テレビ)は診断に関する専門知識以外の記憶をなくした謎の女性が病院を舞台に誤診を正していく物語。まだ伏線が多く、物語の全容がわからないので何とも言えないですが、いくら専門知識があっても素性もわからない人がいきなり病院の診断チームに入ったり、あまりにもあっさりと展開していってしまうことにどうしても違和感を覚えてしまいました。
I:同感です。
複雑すぎない…だからいい
T:TBSにも注目作品が多いですね。
I:金曜ドラマ「妻、小学生になる。」(TBSテレビ)は、荒唐無稽な設定ですが、ちゃんと大人の視聴に堪える作品になってますね。それは石田ゆり子の生まれ変わりを演じる毎田暖乃が、ちゃんと「石田ゆり子っぽく」見えるから。10歳とは思えぬ演技力が、このドラマを成功させています。蒔田彩珠もいい味を出している。
S:お寺カフェのマスターに扮するのは落語家の柳家喬太郎。毎回グレーな霊視をするマスターのシーンだけ、なんだか落語みたい。亡妻が小学生の姿で戻ってくる、という突飛な設定についていくのがやっとなドラマですが、私にとってはこのシーンが箸休めになっています。
Y:火曜ドラマ「ファイトソング」(TBSテレビ)は、ラブコメ的な要素が散りばめられ、実際、劇中でも「これはラブコメ?」というようなセリフがあったりしますが、その背景に「何かに行き詰まった時に、人は何を支えにどう行動するのか」という一歩踏み込んだメッセージが込められている点を興味深く見ています。
H:個人的には第1話を一番楽しめた作品。連続テレビ小説「おかえりモネ」で主役を務めた清原果耶が複雑な設定の主人公をどう演じるのか楽しみでしたが、その期待に応えてくれた。話題にもなった1話のラスト、絶対に泣かないと決めていた主人公が号泣するシーンにはグッときました。韓国ドラマのような悲劇を背負ったヒロインにシンプルかつドラマティックなストーリー……昨今のドラマは複雑すぎるので、こういうのが落ち着く(笑)。
Y:涙が溢れてしまうシーンのような特定の音楽を中心に添えたドラマ作りは、ミュージックビデオのようにいろいろなパターンで制作できるのではとも思います。
H:岡田惠和さんの脚本も時代を読んだ素晴らしい脚本だと思う。これからの展開が楽しみ。
T:日曜劇場「DCU」(TBSテレビ)は、海外向けを意識した割には、水中の映像に迫力がなくて残念。何よりもチーム内に不協和音があるのが気になる。人間関係はもっとシンプルにしたほうがいいと思います。
H:その通りですね。水中の映像が弱いのでDCUの存在意義が弱く感じてしまう。第2話ですでに陸上で操作する水中ドローンを使ってしまったのも、うーん?という感じで。これからの展開で、どんどん陸のシーンが多くなりそうで、じゃあDCUって?で終わってしまうのでは…という不安があります。
中腰のヒーロー、本腰の描写
T:その他の局はどうですか?
S:木曜ドラマ「となりのチカラ」(テレビ朝日)は、困っている人を放っておけない主人公のチカラ(松本潤)の、中腰ヒーローっぷりがなんとも歯がゆい。困りごともネグレクトやヤングケアラーなど、世の問題点を突く設定ながら、どこか形だけで上すべりな感じがします。今後、物語が劇的に動いていくことを期待しながら見続けています。
N:番組ホームページを見たら、「中腰ヒーロー」とあって、納得しました。マンションの中に、それぞれに悩みを抱えた人がいて、松潤演じる主人公が関わっていく。いまどき、ここまで隣人に関与してくる住人がいたらちょっと嫌だなと思うと同時に、こういうことが忌避されすぎてるのかもしれないなとも思わされます。遊川和彦の脚本だけに、主人公が「中腰」なことに意味が出てくるのかなとも思いました。
T:遊川自身が演出も務めているからか、彼らしい毒がまだ少ない。ただ、問題が全然解決しないというもどかしさに、持ち味発揮というところでしょうか。
Y:よるドラ「恋せぬふたり」(NHK)は、アロマンティック(恋愛感情を持たない人)・アセクシュアル(性的感情を持たない人)を専門家監修のもとで丁寧に描いていて、さまざまな視点から物事を見る重要性、多様な考え方の他者の存在を改めて認識するきっかけになるような内容だと思います。
N:アロマンティック・アセクシュアルというテーマに向き合った意欲作ですね。咲子という女性キャラクターが、ずかずかと猪突猛進でヒヤヒヤしてしまいますが、ラブコメディに描かれてきたような典型的なキャラクターが、「恋をしない」ということも、確かにあるのかもしれないなと思いながら見ています。最後がどうなるのか楽しみです。
S:期限切れギリギリのポイントカードを手分けして使い切るくだり、ちょっと素敵ですよね。愛だの恋だのを抜きにしても、ともに生きる家族を求めようとするのは、人間の根源にある思いなのかな、と思いました。
Y:連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(NHK)は、「ファイトソング」と同様、音楽が人生を支え、彩るという視点では見逃せません。ルイ・アームストロングの『On the sunny side of the street』が時を超えて人生をつないでいく様子に、音楽の力を感じます。通常の朝ドラ3本分を濃縮したような構成で、盛りだくさんの15分を毎日楽しんでいます。
I:「ムチャブリ!わたしが社長になるなんて」(日本テレビ)は最初の2回はあまりにも情けない社長ぶりに「なんだかなあ」と思っていたんですけれど、3回目から面白くなってきました。やっぱり高畑充希は上手です。
T:同じ日テレでは、「ケイ×ヤク -あぶない相棒-」(日本テレビ)が今期一番のオススメ。刑事とヤクザが手を組むだけでなく、そこに恋愛感情が生まれそうな雰囲気。まさにその危ない関係が何とも心地よい。新しいタイプのハードボイルドドラマ誕生の予感。
セリフが少ない! イケメンが多い!
H:なぜかじっと見てしまう作品としてドラマ25「鉄オタ道子、2万キロ」(テレビ東京)があります。セリフも少なく、その土地の魅力を画で伝えている。うっかりウトウトしそうにもなるのだけれど、偶然の交流がスパイスになっていて、心が落ち着く。
T:テレ東はグルメやサウナ、キャンプを素材にしたドラマを次々と送り込んできましたが、いよいよ鉄道も登場。ドローンなどを使った見応えある映像で、ご当地の魅力を余すところなく伝えている。コロナ禍だからこそ、その映像がさらに貴重に思えます。
I:ドラマプレミア23「ユーチューバーに娘はやらん!」(テレビ東京)にも注目しています。新郎に逃げられた女性(佐々木希)に、テレビマン(金子ノブアキ)とユーチューバー(戸塚純貴)が恋をする。佐々木希の凜とした演技がいい。いつも間抜けな役の印象があった戸塚純貴が、初めてイケメンに見えました(笑)。
S:土ドラ「おいハンサム!!」(東海テレビ)はホームドラマながら、久々にシュールな手ざわりを感じました。家族それぞれの納豆の食べ方をひたすら伝えたり、別れた男に長女がねちねち絡んだり。テーマやメッセージをひたすら排除しているようにすら思えます。衣装がトレンドに寄っていないところも逆に目を引きます。ただ、見終わると、なかなかにダメダメな三姉妹も愛らしいし、父(吉田鋼太郎)はめちゃめちゃカッコよく見えます。
T:今期はイケメンを前面に押し出したドラマが多く、その中で3本を。オシドラサタデー「鹿楓堂よついろ日和」(テレビ朝日)はイケメンが多く出演するけれど、その中でさりげなくゲストの背景を描くなど手慣れた演出が光っています。登場する料理やデザートも大いにそそる。今期のおススメ作品です。もうひとつ「パティシエさんとお嬢さん」(tvk、BS11ほか)。イケメンな主人公だけれど、恋愛に奥手で、その初々しさが大きな見どころ。こちらも登場するケーキがすべておいしそう。「薄桜鬼」(WOWOW)は時代劇×2.5次元俳優という異色の組み合わせ。新選組にこんなイケメンがいるとは思えないが、そこはフィクション。東映が制作協力しているだけあって、イケメンの美が時代劇の様式美と見事な調和を見せています。
H:最後に「ゴシップ #彼女が知りたい本当の」(フジテレビ)も。ネットニュースをバズらせるために事実を追及していく様は、フェイクニュースにあふれた現代に切り込むテーマも含んでいると思う。黒木華の淡々としたセリフ回しや独特の声質がテーマとも合っています。主役が背負う謎も気になるところですが、毎回の取材対象が持つ、二転三転する事実も納得できるもので、引き続き見ていきたいと思っています。
T:こんなところでしょうか。各メンバーの注目作品が多く、取り上げた作品も多くなりましたね。総括の時にどんな評価に変わっているのかも楽しみです。
(2022年1月28日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています