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【座談会】2021年春ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第10弾★

4月25日から東京、京都、大阪、兵庫の4都府県で3度目の緊急事態宣言が発出されるなど、ゴールデンウイークを目前にしても変わらず「ステイホーム」が求められています。そんななか、春ドラマも順次スタート。今期はどんな楽しみや癒やしをくれるでしょうか?
マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、2021年春の注目ドラマを語ります!

かぶって見える「型破り」

T:春ドラマも出揃いつつあります、注目作品など語っていきましょう。フジテレビの作品からいきましょうか。「イチケイのカラス」(フジテレビ系)は、珍しく裁判官が主人公のドラマ。特に刑事裁判官を描いた民放の連ドラはこれが初めてだとか。そんな設定のユニークさだけでなく、取り扱う事件もなかなか面白い。竹野内豊の軽妙な演技もいい。
S:面白いけれど、入間みちお(竹野内豊)の型破りなところとか、すぐ職権発動して独自捜査しちゃうところとか、どうしても「HERO」(2001年・14年フジテレビ、木村拓哉主演)がよぎっちゃうな。
H:そこですよね(笑)。例えば主人公がいろんな民芸品を集めているっていうのも、通販好きな「HERO」とかぶって見えてしまう。ただ、やっぱり面白いんですよね。黒木華の演技も含めて、満足感は高い。あとは同僚の個性がこの後どう出てくるかにも注目したい。「HERO」はサブの人間模様も含めて、圧倒的に面白かったので、そこを期待しちゃいます。
S:あとは傍聴席からヤジるゲスト芸人が毎回変わるのを楽しみにしています。

クセがあるから続きが見たい

N:「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジテレビ系)は、映画『花束みたいな恋をした』に続き、こんなに早く坂元裕二の作品が見られるとは。キャストも最高だし、坂元裕二テイストながらも、予想外の展開で次が早く見たくなりました。台詞もグッとくる半面、少しキャラクターの誇張が過ぎているような気もしてしまうところもあったりはします。でも、そういうクセの強さも魅力だし、全体を通してみると、また違うテーマも見えるのではないかと期待しています。
S:変わり者の日々をつづるエッセイととらえ、たたみかけるような面白エピソードの羅列を楽しんでいます。でも坂元裕二の脚本がそれだけで終わるわけないよな、とも思ってます。
I:坂元裕二も面白さの幅が広い脚本家ですよね。松たか子の演技と、ナレーションの伊藤沙莉が絶妙なテンポで雰囲気を盛り上げ、キャスティングが成功したと思います。慎森(しんしん=岡田将生)だの鹿太郎(かたろう=角田晃広)だの八作(はっさく=松田龍平)だの、非現実的な登場人物の名前も、おかしさを盛り上げる要素になっています。
Y:確かに、個性的なキャスト、伊藤沙莉の独特のナレーション、毎回アレンジが違うエンディングと魅力が満載。「カルテット」(2017年、TBSテレビ)の時と同じくテンポよく癖のある表現の会話が面白い。それぞれの登場人物の過去や感情の深みをより知って理解したいと思わされる作りになっていると思う。今後どのようなエピソードが出てくるのか、続きが楽しみ。
I:「レンアイ漫画家」(フジテレビ系)はいかにも漫画原作で、そんな無茶な、と言いたくなる現実離れしたストーリー展開ですが、絵が綺麗です。丁寧に撮っているというか……。鈴木亮平の演技は特に秀逸ですが、片岡愛之助と吉岡里帆もしっかり脇を固めています。気楽に見て楽しめるコメディではないでしょうか。
H:気楽に見られる作品ではピカイチですね(笑)。僕も結構好感を持っています。吉岡里帆にモテない役は無理があると、過去の作品でも分かってて、期待値は低かった。でも今回はそこが嫌味なく受け入れられる。漫画の力なのかコメディの力なのか分からないけれど、雰囲気がいいですね。

劇中コントが今後のカギに?

T:日本テレビの作品はどうでしょうか。
Y:「コントが始まる」(日本テレビ系)は、芸人として「何者かになろうとした」3人と、「何者でもない自分」との折り合いの付け方を考えている女性の対比のなか、登場人物たちが人生の転機にどう向き合っていくのか、物語の展開に注目したい。いろんなパターンで登場人物の感情に親近感を持ったり、昔を思い出したり、自分に置き換えて考えてみたりできるドラマではと思う。初回からラーメン屋のシーンなど印象的な場面があったが、心が揺さぶられるようなセリフや表現が今後も出てくるのではと期待している。
N:コントを題材にしたドラマが作られるということに、お笑いブームの凄さを感じます。菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀というキャストと、金子茂樹の脚本にも期待が高まってます。ただ、お笑い好きからすると、コントと物語の関連付けの部分はいいけれど、そのコントが気になってしまうところはあります。第1話で皆がラーメン食べて泣いているシーンにさほど気持ちが乗れなかったことはありました。でもそこは連続ドラマなので、見ていくうちにまた人物への共感度が変わっていくのかもしれません。
H:正直、放送前は直前の映画もあって既視感というか、仲間うちで固めたなぁっていう感想しかなかった。ただ、やっぱり実力はある俳優たちですよね。高校時代から続く長い青春時代を心地よい作品にしている。それに加えて、『GALAC』2月号の特集で注目俳優にも挙げられた古川琴音や小野莉奈などもいいアクセントになっている。ただ、ドラマで「笑い」は本当に難しい。嘘の笑いほど視聴者を興覚めさせるものはないので、やっぱりコントの出来がこの作品の肝だと思いますね。

ズレた夫婦の爆笑コメディ

T:TBSの作品はどうでしょうか。
S:肩の力を抜いて楽しめるドラマも見たいので、今期は金曜ドラマ「リコカツ」(TBSテレビ系)を。結婚してみたらまったく価値観が違った自衛隊員の夫(永山瑛太)と編集者の妻(北川景子)。価値観のズレっぷりに往年の名作「ダブル・キッチン」(1993年TBS、山口智子主演)を思い出しました。自衛隊員のキャラクターが誇張されている感はあるものの、主演の二人が生み出す絶妙な間に爆笑しています。離婚前提の夫婦が織りなすコメディなのに、ちょっとしたセリフや演技から相手を思いやる気持ちがにじみ出るところにグッときます。
H:ほんとうに素直に楽しめる作品。確かに、永山瑛太が妻とのやりとりでしどろもどろになるシーンは笑ってしまいます。本当に離婚するの?というところがポイントになってくるので、こちらの予想もしない展開になることを期待したいところです。
I:永山瑛太が高倉健に見えるんだけれど…。意識してるのか、たまたまなのかは謎ですね(笑)。
H:Amazonプライム・ビデオで配信してる「ホットママ」を見たんですが、思わぬ妊娠をきっかけに結婚する二人の物語。妻が仕事に真っ直ぐで、という設定が似ていて、それと重ねました。この2作は「子育て」か「離婚」か、物語の向かう方向は違っていても、夫婦それぞれの形を目指していいんだ、という現代ならではのメッセージを感じましたね。
I:コロナの影響で1年延期になった日曜劇場「ドラゴン桜」(TBSテレビ系)もいよいよ始まりました。16年前の単なる焼き直しプラスアルファではなく、伏線張りまくりのミステリアスな展開が楽しめそうです。

粒ぞろいのテレ東4本

T:テレビ東京作品は今期も粒ぞろいですよね。ドラマホリック!「DIVE!!」(テレビ東京系)は飛び込みを題材にしたスポーツドラマ。高校生ならではのキラキラとした姿を凝った映像で表現していて、単なるアイドルドラマとは一線を画している。ジャニーズJr.のHiHi Jetsの3人は自然な演技で好感が持てるし、映画版を超えるのではないかという期待も持てる。
Y:「珈琲いかがでしょう」(テレビ東京系)は、「凪のお暇」(2019年、TBSテレビ)と同じくコナリミサトの漫画が原作で、ミステリアスだが魅力ある男性キャラクターに中村倫也が今回もぴったりハマっている。各回オムニバス形式で、多様な職業や立場で現代を生きる人たちの生活や感情が映しだされている点も見応えがある。荻上直子監督・脚本の作品を連続ドラマで見られるのは贅沢だと思う。主人公の過去にまつわるエピソードが差し込まれ、明らかになっていない謎がどう展開していくのかと先が気になる作りにもなっている。
N:ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」(テレビ東京系)はジェーン・スーの原作を、山戸結希が演出。第1話と第2話には、山戸テイストがあふれ出ていて、ドラマとは思えないほどの息苦しさに満ちていて好みでした。第3話では演出家が変わってグッと気楽な雰囲気になり、昨今の男らしさとは女らしさとは?というテーマも見えてきて面白かったです。
Y:もうひとつ、ドラマ25「ソロ活女子のススメ」(テレビ東京系)は、前期の「俺の家の話」「その女、ジルバ」で存在感を示した江口のりこが主演。我が道を行く40代女性を自然体で演じている感じがいい。ゆるりと見られる一方、「ソロ活」を通して「自分の生き方を狭め、制限しているのは他人ではなく自分自身」と気づくシーンなど、ハッとするセリフもあり興味深い。

わからない「きれいのくに」、ぬかりない「華麗なる一族」

T:そのほか、個別に気になった作品があればお願いします。
S:よるドラ「きれいのくに」(NHK)は、第2話まで進んでも話がわからない。時代を行きつ戻りつしながらひとりの女性の恋愛遍歴がスケッチされるのですが、スタイリッシュな映像美で、性の生々しさを浮かび上がらせる作りは新鮮だと思う。でも、そういう構成だからか、テーマが見えてこない。このままの展開だと、深みがあると見せかけて、ただただ過激なシーンの羅列で終わりそうで、心配。
I:私も何がしたいのかわからなかった。一人の女性を年代の異なる3人の女優が演じるのは珍しくないのですが、それが実にわかりにくい。別の女性かと勘違いして混乱した視聴者もいるんじゃないかと思います。
N:ドラマの冒頭は、リアルなテイストなのかと思いきや、第1話の終盤から、40代の妻がある日突然若返ってというファンタジックな話になり、今までに見たことがないストーリーで、とりあえず最後まで見ないとわからないという感じで見ています。夫が若返った妻に魅力を感じながらも、それをどう受け入れていいのか分からない様子は、ファンタジックな設定のなかで異様にリアルで面白いです。夫を演じる平原テツさんなのも、いいですね。
T:土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」(NHK)は今期の注目作だと思う。カメラの前では自分の意見を言わないことで世渡りしてきた元アナウンサー。データの改ざんを隠蔽し財政難を乗り越えようとする大学幹部。低賃金ながらも科学の未来を信じる非正規雇用の研究者。さまざまな登場人物を通して、現在社会の闇を風刺しようとする意欲的なドラマだ。主人公がどのように変わっていくのか、期待しながら見ていきたい。
S:連続ドラマW「華麗なる一族」(WOWOWが、いいですね。王道を行く重厚さにひたっています。業績拡大を目指す野心だらけの当主、家柄に縛られる子どもたち、ひとつ屋根の下に暮らす正妻と愛人。万俵家のどうかしている感じが初回から伝わってきて、気持ちがざわざわします。物語の背景にある戦後高度経済成長の実写化にほころびがないところも、ドラマの魅力を下支えしていると思います。
H:やっぱり魅力のある作品ですよね。物語は過去作で何回も見ていて、展開も知っているのにドキドキしてしまう。今回のWOWOW版も期待を裏切らない初回だった。たぶんこのまま見続けてしまう(笑)。そのくらいの力がある作品。
T:「FM999 999WOMEN’S SONGS」(WOWOW)も挙げたい。主人公の脳内に現れるラジオ「FM999」で、3人の女性が「女のうた」を披露していくという設定。そして、歌によって女性とは何かを表現していくという実験的なドラマ。宮沢りえがゲスト出演するなど、ユニークな女優陣も見ものです。
H:WOWOWでは5月スタートの「さまよう刃」にも期待しています。東野圭吾原作で、過去には映画化もしている。胸を締め付けられる物語だけに、「イチケイのカラス」でコミカルに演じている竹野内豊がどんな演技をみせてくれるのか楽しみですね。

週1回じゃ満足できない?

T:ほかに感想があればお願いします。
Y:全体を通して改めて感じたことは、「面白いドラマほど、そのまま続きを見たくなる」気持ちが強まっている気がするということ。これまで放送で週に1回同じ時間枠で最新話が見られる、という試聴形態に慣れていたつもりでも、Netflixなどで「一気見」を体験すると、ついそちらの方法を優先して考えるようになってしまう。配信でのドラマ視聴が普通になっている若い世代の人にとってはなおさらかもしれない。
H:すごく分かります。以前は一週間をウズウズしながら待っていたけれど、その感覚を楽しむというのはなくなってきていますよね。
Y:また続きが気になるからこそ、録画や配信で完結後にまとめて見るようにする視聴者も増えている可能性もある。放送時の視聴率だけでは測れない、多様化した視聴形態にもっと目を向けるべき時が来ているように感じています。
T:今期も数多くの作品が挙がりましたね。総括の時期に、どうなるのか楽しみです。

(2021年4月26日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています