★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第15弾★
新たな変異株・オミクロン株の出現で、ふたたび不安が漂い始めたコロナ禍2回目の年末年始。
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが2021年秋ドラマ注目作の感想を語ります!
●
ハッピー気分にどっぷり
T:新年明けましておめでとうございます。年末に終わった秋ドラマを総括していきましょう。
I:前回の座談会「2021年秋ドラマを語る!」でも最初に取り上げた水曜ドラマ「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~(日本テレビ系)は、最初から最後まで楽しめました。盲学校に通う高校生(杉咲花)や、ヤンキー君(杉野遥亮)たちを通して、啓蒙の要素を押しつけがましくなく入れ込みながら、良質のエンターテインメントに仕上げていた。最終的にみんなハッピーエンドになった最終回は、こちらもハッピー気分になれました。
H:秋ドラマの中でいちばん楽しめたドラマでした。ストーリーはオーソドックスなラブコメディだけれど、健気でまっ直ぐな2人を応援したくなったし、弱視の人たちが抱える不安を、笑いを交えながら情報としても提供していたのは秀逸だったと思う。未来を見据えた終わり方も良かったです。
I:江口のりこが若い2人のイケメン(赤楚衛二、町田啓太)から思いを寄せられる「SUPER RICH」(フジテレビ系)と、濱田岳が2人の美女(小西真奈美、山下美月)から思われるドラマプレミア23「じゃない方の彼女」(テレビ東京系)。どちらもルッキズムでごめんなさいなんだけれど、「なんでやねん」的なノリで盛り上がってしまった。とくに中身の素敵な女性を演じていた江口のりこがモテるのには納得できました。一緒に見ていた男性の家族はどうも納得いかなかったみたいだけれど(笑)。
S:「SUPER RICH」が描いた“失いし者の逆襲”は、全編通して痛快でした。最終回で、各話のゲストたちを絡ませた展開も心憎かったです。ただ、ラストで急に、本当の豊かさについて語りだしてしまったのは残念。仕事で成功することも、古びた家で好きな人とラーメンを作って食べることも、どちらも幸せ。衛(江口)と優(赤楚)の来し方を見てきた視聴者には、わざわざセリフにしなくても、伝わっていると思うんだけどなあ。
心理描写の妙をじっくり
T:最終回でいうと、金曜ドラマ「最愛」(TBSテレビ系)の怒濤の謎解きは見事。しかし、このドラマの良さは、物語よりも登場人物の心理描写の妙にある。誰にも思い入れができなくて、見ていて心がひりひりする独自の世界観を持ったドラマでした。
Y:たしかに、最終回まで目が離せない展開と、各回の重要なシーンを印象づける宇多田ヒカルの主題歌が相まって魅力的な作品になっていました。結末がわかった後に、もう一度はじめから見直せば改めて気づく表現などがあるのではないかと思い、再度見直そうとしているところです。放送後も一気見の需要がありそうなので、配信などを活用した視聴の広がりも期待できるのでは?
S:はじめの数回は時間の経過や物語の舞台が目まぐるしく展開していて、物語を追うのに必死でした。謎が謎を呼ぶ展開ながらもどこか落ち着いて見られたのは、人と人との気持ちの通った結びつきを描いていたからではないかな、と思いました。それにしても、警察官と捜査対象者が近すぎますよね。
N:ドラマ24「スナック キズツキ」(テレビ東京系)は、原田知世演じるママがいるスナックに、ちょっとだけ傷ついた人が吸い寄せられたように入っていくドラマ。傷ついた人が毎回出てくるのですが、その人も誰かをちょっとだけ傷つけていて連鎖しているというところが、ドラマとして面白く、そして、なぜか自分と地続きのような気分にさせてくれました。
Y:スナックを訪れる人たちの「キズツキ」が少しずつ受け入れられ、記憶や感情を発散させるきっかけをもたらす様子が毎回楽しみでした。各回でフォーカスされる登場人物たちは少しずつ繋がりがあり、次は誰のどんなエピソードだろう、という面白さもありました。最終回でそれまで謎が多かった主人公の人生が垣間見られたことで、客だけでなく店主も含め、皆がさまざまな思いを抱いて生きていることがより深く伝わった気がしました。
ひりひりする じりじりする
T:そのほか、個々に挙げたいドラマはありますか?
N:ドラマ特区「美しい彼」(毎日放送)は、BL(ボーイズラブ)原作ものの実写化。「美しい彼」である清居役の八木勇征はEXILEのいるLDHの若手グループのひとり。演技はほぼ初めてながら、カリスマ性と寂しさを持ったキャラクターを演じきっていました。彼を見つめる平良役の萩原利久は、数々の作品で経験を積んできただけに、安定感がありました。平和で優しいBL実写が多いなか、ひりひりした感情を描いていたことにも心を掴まれました。
T:美しい風貌の同級生に片思いをする高校生の姿が何とも切ない。決して結ばれることがないと思いながら恋い焦がれるその恋愛は、古典的でありそして新しい。BLドラマも新たなフェーズに入ってきたと思う。
H:ドラマL「それでも愛を誓いますか?」(朝日放送テレビ=テレビ朝日系)は夫婦の微妙な関係性を繊細に描いた秀作。些細なことをきっかけに2人のちょっとしたズレがどんどん広がっていく様は、ひとつひとつのエピソードはよくあるものなのに、1話ごとに主人公の気持ちを丁寧に積み上げたことで感情移入できました。最終回に、その些細なきっかけが「私たちにとって全てだった」というセリフで回収した展開もスッキリ。話題になった長尺のキスシーンはとても素敵なシーンになっていたし、劇中の男性たちが全員弱さを抱えているのも現代らしい描き方でした。主演の松本まりかの表現力も評価したいです。
I:「真犯人フラグ」(日本テレビ系)はまだ終わってないですが、展開がまったく読めない。同じスタッフが作った「あなたの番です」のキャストがときどき出演するマニアックさって、どうなんだろう。個人的には思わずニヤリとしちゃうけれど。
S:同じく日テレの「二月の勝者-絶対合格の教室-」(日本テレビ系)は「中学受験は課金ゲーム」「必要なのは父親の経済力と母親の狂気」など、初回から刺激的なセリフであおり、単なる受験ノウハウものかと思いましたが、回を重ねるごとに生徒それぞれの家庭環境や、塾講師の思いが描かれ、気づけば、桜花ゼミの生徒たちの成長を親のような気持ちで見守っていました。格差社会の象徴となりうる中学受験をテーマにしながら、学ぶことで世界を広げていく子どもたちの無限の可能性がうたいあげられていて、感動しました。
男にほれぼれ 女にほのぼの
T:金曜ナイトドラマ「和田家の男たち」(テレビ朝日系)に登場するのは、マスコミに携わる息子(相葉雅紀)・父(佐々木蔵之介)・祖父(段田安則)の3代の男たち。表現方法は違っても、それぞれの矜持が格好良くて、ほれぼれする。美味しそうな家庭料理が、3人を絶秒に繋いでいました。
I:NHKではドラマ10「群青領域」(NHK総合)を挙げたい。傷を負った人が集まった海辺の静かな下宿屋と、SNSなどに翻弄されるという都会的なバンドという、対照的な場所を行ったり来たりしながら紡がれた物語。見終えたあとに、清涼感がありました。
N:私はよるドラ「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」(NHK総合)を。阿佐ヶ谷姉妹のエッセイを原作にドラマ化。本人たちが演じたらいいのにと最初は思いましたが、見始めると木村多江と安藤玉恵の演じる姉妹がハマっていたのにびっくり。内容としては何も大きな出来事は起こらないんだけれど、日常の悲喜こもごもが描かれていて、ちょっとホロッとするところもあります。ずっと見ていたいドラマで、シーズン2も期待したいです。
S:土ドラ「顔だけ先生」(東海テレビ=フジテレビ系)は、高校非常勤講師の遠藤(神尾楓珠)の自由すぎる振る舞いに触発され、生徒たちが覚醒する物語を毎回楽しく見ていましたが、最終回は触発されなかった生徒たちによる逆襲という、まるでちゃぶ台をひっくり返すような展開に。それでも「好き」をおもりにすると、どんな状況に陥っても気持ちのブレが収められる、という遠藤の心根が物語をしっかり貫いていて、最後まで楽しく、ときどき目を潤ませながら見ました。指導役の亀高先生を表情豊かに演じた貫地谷しほりに釘づけでした。
T:こんなところでしょうか。2021年のドラマは、前半は豪華作品が並びドラマフリークを喜ばせ、後半も静かな秀作が並びましたね。2022年も多数の注目作品が出てくると思います。引き続き、チェックしていきましょう! 今年もよろしくお願いします!
以上(2022年1月4日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています