放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第1弾!
ドラマ通が集うギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、
2019年秋ドラマの感想、注目作品を語りました。
ぜひご覧いただければ幸いです!
オリジナル作品に力を入れる日テレドラマ
T:ドラマ座談会、始めていきましょう。
H:今期は個人的に「同期のサクラ」が一番いい。遊川和彦さんらしい、社会を映すドラマとして見応えがある。「家政婦のミタ」では家族の在り方がテーマだったけど、今回は働き方をテーマにしていて時代を映すドラマになってる。
N:高畑充希が合うよね、頑なな感じというか…遊川さんらしい主人公。
Y:この先、思ってもないテーマが出て来るのかで大きく変わりそう。
T:基本的にはコメディだよね、でも社会について考えさせられる。それはずっと遊川さんが持っているオリジナリティで、「過保護のカホコ」や「ハケン占い師アタル」もそうだった。そういう毒が今作でも出てくるかに期待したい。「俺の話は長い」はどう?
I:こういうドラマが私には合ってるかな。他愛もない姉弟喧嘩の話だけど、家族の在り方が言葉の端々から出てくる感じがちょうどいい。でも、オチがあるようでないから1話30分の2本立てが画期的な感じはしないんだよなぁ…。
T:お茶の間が舞台なんで、見やすさはあるけど…っていう。
I:演者はみんなうまい。ただ、娘役の清原果耶はいったい何歳の設定なんだ?っていう(笑)。
T:「ニッポンノワール―刑事Yの反乱―」はどうですか?
H:いや〜これは分からない(笑)。
Y:私も付いていけなかった。
T:「3年A組」のスタッフですよね、これ。
H:世界観も同じなんですよね。劇中に「3年A組」の話が出てきたり。
Y:それはおもしろいなと思っていて、ヒットしたコンテンツの展開として、スタッフがシフトするだけじゃなく、同じ世界の半年後として別のドラマを描くのは仕掛けとしては新しい。ただ、ドラマ自体は全然リアリティがない(笑)。
T:工藤阿須加のハジけぶりがすごいよね。あのアクションだけでも結構おもしろいことはしてる。ただ、ストーリー的には…っていう。
H:この枠の前が「あなたの番です」で、その前が「3年A組」。ずっと見続けないと分からない枠なのかな?
Y:疑われる人がどんどん変わっていくから、結局全部見ないとわかんないっていう…。
Y:暴力シーンに子役がいたり、その表現大丈夫なのか、って気になるところもある。子役は9歳の役だけど、不思議な喋り方…あれは仕込みで今後ストーリーに関連するのかな?と思ってしまった。
T:映像も凝ってる。
Y:Huluとか海外も意識してる感じはありますね。
I:日テレの今クールは全部オリジナル?それはすごいことですよね。
「ドクターX」と長寿ドラマを持するテレ朝の強さ
T:テレ朝はまずは「相棒」。
I:「相棒」は年ごとにテーマ・視点があって、今回は猟奇的な事件も扱ってる。
N:そう。船越英一郎がすごい殺人兵器みたいな役で出てきたりとか。
I:3話目で殺人犯が子どもを連れ去ると、その子も犯人が犯行に至った理由に共感して自分の意志で付いて行く、みたいな心理サスペンスの感じは、面白い。
Y:これだけ長くやっているのに安定感がすごい。
I:基本的に右京さんは正義の人なんだけど、今回は正義とか社会的なものよりも、人の気持ちが前に出てて、それをエンターテインメントとして成立させてる。
H:テレ朝は全部がシリーズ物ですよね。
N:「おっさんずラブ」もシーズン2。「科捜研の女」は、シーズン19。
T:視聴率トップの「ドクターX」はどうでしょう。
K:1話では「こんなところにポツンと一軒家」の要素を入れてて、余裕を感じる(笑)。
T:ちょっと遊んでるというかね。まぁでも、結局は定番ですよね。
K:そうですね。AIとの戦いっていう新しい要素もあるけど。あとは演者が豪華(笑)。
T:12年ぶりの「時効警察」は?このドラマのおもしろさって、三木さんのユーモアのセンスとか笑いですよね。
H:そこがカチッとハマればよかったけど…。
Y:良くも悪くもドラマは変わってなくって、見る側のスタンスが変わってるんじゃないかな。 12年前は内輪で楽しんでたけど、今はSNSしながら視聴するのも定着して、それが違和感に繋がるのかも。でも、12年経って続編を出すって「テレビをもう一回見てね」っていうメッセージな感じがしますよね。「まだ結婚できない男」も13年ぶり。
TBSはやっぱり日曜劇場に注目?
T:次はTBS。「G線上のあなたと私」。
K:驚いたのが、磯山晶さんがプロデューサーで、こんなのやるんだっていう。
I:で、演出が金子文紀さん。けれん味ある画作りが持ち味だと思うんだけど、その割にはベタすぎてどうしよう、みたいな。
T:よく言えば等身大の話なんだけど、要は昔の男を吹っ切れないでいる女性の物語ですよね。それをうだうだうだとやってる。物語に新しさがない。「4分間のマリーゴールド」は?
I:人の最期が見えちゃうんですよ。特殊能力で。主人公の先輩の救急救命士役が三浦誠己さんで、それがすごく良くて見続けてる。
K:ドラマを見比べたときに「同期のサクラ」も脳挫傷で重体の今から遡ってスタートする。「4分間の〜」も未来に待ち構えてるものに向かって進んでいく感じが被ってるように感じたんですよね。他にも、高畑さんがメガネで、波瑠さんもメガネかけてて、そういう女性のイメージの作り方とか、何かあるのかな?って、そんなところが気になっちゃったりもしたけど。
T:次は「グランメゾン東京」。
N:さすが日曜劇場らしい予算のかけ方で(笑)。
Y:目立ちますよね、このご時世に。
T:まぁでも、やっぱりキムタクのドラマって感じですよね。シェフ役は初めて?
K:でも、ビストロSMAPで見てるから既視感というか。
I:善悪がはっきりしているのは日曜劇場テイストのまま。それとキムタクドラマが割といい感じでミックスされてる。
T:あと料理がすごくおいしそう。
I:同じレストランものでは前クールに「Heaven?〜ご苦楽レストラン」があったけれど、そのチープさと比べて、このゴージャスさは何?っていう(笑)。あと、黒岩勉さんは筋運びが手堅いから物語も破綻しない安心感がある。
ニッチな心をとらえるテレ東ドラマ
T:次はテレビ東京「ハル~総合商社の女~」。
K:初回はラーメン屋で再起を図る話だったけど、やはり日経のドラマって感じ。
N:この枠は毎回そういうテイスト。だから、ビジネスマンが見ても空々しい感じではなくなってる。
I:そうかな? 私にはキャリアウーマンの戦い方が割と画一的に感じて。男女雇用機会均等法が成立したてのあの感じ。それを未だにやってるの?っていう(笑)。プロデュースに1990〜2000年代のフジテレビドラマを作った栗原美和子さんが入っていて、なんとなくその時代観を引きずってるのかなぁ。
T:「死役所」は?
K:違う切り口のゾンビ物。あの世に死役所っていうところがあって、死因別に自殺課とかいろんな課があって、その設定は面白い。
T:「孤独のグルメ Season8」は?
H:見ると、次の日のお昼に食べたくなる(笑)。
K:食べ物関連では、「新米姉妹のふたりごはん」と「ひとりキャンプで食って寝る」も。
H:「新米姉妹のふたりごはん」は両親が再婚して一緒に住むことになる姉妹の話。で、料理を作る過程で仲良くなっていくっていう。
K:「きのう何食べた?」が男性同士だったけど、今回は女性同士。
T:「ひとりキャンプで食って寝る」も独特。ほとんど台詞がなく、静かに淡々とキャンプで過ごす様子を映してるっていう…。
H:YouTubeで流行ってますよね。
Y:そう。YouTubeでキャンプ動画が流行ってて、その流れかなぁ。
T:三浦貴大と夏帆が主演の回が交互にあって、火打石で火起こしを実際にやるとか、すごい気持ちいいんですよね。
T:前クールも「サ道」で、ニッチなところをよく押さえてた。今度もキャンプ好きなニッチな層に向けたドラマ。
帰ってきたフジ「結婚できない男」や如何に
T:フジテレビは月9「シャーロック」から。これはディーン・フジオカ無くしてできなかったドラマ。相方役の岩田の演技が下手で、存在感が全然ない(笑)。だから彼の変幻自在ぶりが際立ってる。
Y:BBCであれだけインパクトがあるシャーロックをやってて、どうしてもその印象で見ちゃうところもあるんですよね。
T:でも、井上由美子さんの脚本はやっぱりプロの技。セリフを聞いてるだけでも心地いい。さっき話に出た「まだ結婚できない男」は?
H:良い意味でも悪い意味でも前作から変わってない。
T:ある意味時代を反映してる。十何年前は結婚できない男もコミカルにできたけど、今回はわりと現実味がある。結婚できないというか結婚しない男ですよね。
K:最後が気になる。まだ結婚できない男が最終的に結婚に至るのか。
H:結婚しちゃったらがっかりですよね(笑)。
T:「モトカレマニア」は?
I:これは楽しい。元カレ、元カノを引きずる人達が出会って、同盟を結成して話が展開していく。彼女を忘れられない役を浜野謙太さんがやっていて。
H:いい味出してましたよね。
I:ハマケンがかっこよく見えるこのドラマは、きっと楽しい!って(笑)。
K:「ハッピーマニア」を思い出しましたね。原作の瀧波ユカリが同世代で、「ハッピーマニア」の世界観を彼女なりに持ってきたというか。
Y:結構明るく消化するタイプの作品ですよね。「ハッピーマニア」の頃は社会にまだ元気があったけど。それを現代にしたというか。
I:それこそ昔の「月9」って感じ。
NHK朝ドラの風格と上書き力
T:NHKは「ジコチョー」から。
K:「ドクターX」を意識して、決め台詞が「私失敗しちゃった」(笑)。事故調査の話で、毎回の検証を通じて働き方とか色んな要素を入れながら、「私失敗しちゃった」っていうのは笑っちゃいました。
T:次に「少年寅次郎」。
I:岡田惠和さん脚本で、寅さんの世界を崩さず、本当に悪い人が誰も出てこない。いいですよね、これは。
T:寅さんのお父さん役の毎熊克哉も良かった。あとは、子役の寅さんが、いかにも寅さんで(笑)。
N:山田洋次さんが認めてた。素晴らしいですよ。
T:朝ドラは「スカーレット」がスタートしてる。
I:改めて朝ドラの上書き力ってすごい。ちょっと前まで「なつぞら」で雪次郎がどうだとか言ってたのに、既にキミちゃんしょうがねぇな、ってどんどん新しい物語に慣らされていく(笑)。
N:それで視聴率が20%いくのもすごい。
I:貧乏な女の子が都会に出て苦労しながら、成長していくのが朝ドラの基本フォーマットで、それは同じ。さっき言った「ハル〜」の、男社会の商社でひとり立ち向かう女の描き方が画一的で嫌だなぁって思ったんだけど、「スカーレット」では水野美紀が男顔負けで特ダネを取りまくる新聞記者で出ていて、そっちは気持ちよく見られる。やっぱり戦後すぐの話を知らないこととして、ファンタジーとして見てるからなのかなぁ。
T:今は大島優子と林遣都が浮いちゃってるけど、どうなってくか楽しみ。
N:本当に朝ドラらしいですよね。ストッキングを縫ったお金のエピソードも、こうなるぞと思ったらやっぱりそうなるみたいな(笑)。
T:予想したのがそのまま現実になる。
I:それを先が読めてつまんないとみるか、そうだよなぁやっぱそうなるよなぁって共感するかどうか。
T:他は?
Y:MBS制作「左ききのエレン」は元々ネット配信されていた漫画が原作。ネット発の漫画がドラマっていうのは、原作も多様化してる表れだと思う。
T:BSだと尾野真千子主演の「怪談牡丹燈籠」。脚本・演出がギャラクシー賞を獲った源孝志さん。やっぱり映像が新しい。で、とにかく尾野真千子が怖い。もう一つのオススメがBSテレ東の「江戸前の旬」。season2だけど、何よりもお寿司がおいしそう。
2019年秋ドラマ注目作はこれだ!
T:そろそろまとめましょうか。
N:僕はやっぱり「グランメゾン東京」。
I:横綱相撲ですよね。強い横綱を見続けたい気持ち。
N:あとは「少年寅次郎」にも注目かな。
K:僕は「時効警察」と「まだ結婚できない男」。十数年ぶりにドラマを最後まで見たいかな。
I:私は「モトカレマニア」を見届けたい。
H:僕は「同期のサクラ」。
T:遊川さんは仕掛けをいっぱい用意してそう。「ニッポンノワール」は?
H:話題になってから一気見でいいかな(笑)。
T:あと忘れていけないのは「おっさんずラブ」。
Y:家で一人で楽しめる作品だという印象で、映画館でみんなで見るということにやや違和感があったけれど、映画の興収が25億円まで伸びているのはすごいですね。
T:新しいキャストで、千葉雄大くんに期待してます。
以上(2019年10月28日開催)
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