まる~っと番組、しれ~っと番宣
「ごごナマ おいしい金曜日」
(NHK総合)
桧山珠美
師走。新しい朝ドラ「おちょやん」がスタートして2週間。巷では「7作ぶりに大台割れ」とか「スタートダッシュに失敗」とか、これから半年間放送する連続ドラマの、ほんの初っ端だけを見て、あ~だこ~だとうるさいったらありゃしない。そんな輩もけしからんが、かといって恥も外聞も捨てて、番組まるごとの番宣というのはいかがなものか。
12月11日放送「ごごナマ おいしい金曜日」は、「連続テレビ小説『おちょやん』スペシャル!」と題し、13時40分から途中5分間のニュースを挟んで15時30分まで、「おちょやん」づくし。番組MC西川きよしの長男・西川忠志が劇場支配人の役で出演していたり、同じくMCの三戸なつめが、ヒロイン千代の亡くなった母役で出演していたりと、何かとご縁があるのはわかるが、にしても、ここまでやっちゃいますか、だ。
開口一番、岩槻里子アナが「今日はいつもとはちょっと一味違う『ごごナマ』でお届けしたいんですよ。師匠行きましょう」と西川を促すと、「『おちょやん』スペシャル~!」と大声でタイトルを叫ぶキー坊。
タイトルコールを大声で叫ぶのは、ダウンタウン浜田雅功の専売特許かと思っていたが、よくよく考えてみれば、このキー坊も昭和の時代から「プロポーズ大作戦~!」とか「パンチDEデート~!」とか叫んでいたっけ。これって関西の伝統芸なのか!? などというのは置いといて、番組では、見逃した人のためにと、これまでのまとめVTRに始まり、ヒロインが働く芝居茶屋「岡安」の先代おかみ・岡田ハナ役の宮田圭子をゲストに迎えてのエピソードトークなどなど。
宮田が若かりし頃、おちょやんのモデル・浪花千栄子と共演したという話は興味深かったが、それ以外は、この2週間、毎日「おちょやん」と付き合ってきた視聴者にしてみれば、ただのおさらいでしかない。ただでさえ、土曜日は月~金の総集編になり、否が応でもおさらいをさせられるというのに、ここでもまたおさらい。子ども時代の千代役の毎田暖乃ちゃんがいくら名演技で泣かせるといっても、そんなに何度もこすられると涙もちょちょぎれるというものだ。
宣伝したい気持ちもわかるが、番組まるごとジャックはやり過ぎ。「おいしい金曜日」ってNHKにとって“おいしい”番組ってことなのか。隙あらば番宣と再放送を放り込んでくるNHK、視聴者にはとっくにバレてますよ、とご注進の代わりに、「今月のダラクシー賞」を贈る。
~著者のつぶやき~
浪花千栄子といえば、オロナイン軟膏のホーローの看板でおなじみ。ボンカレーの松山容子と混同している人が多くて、ああ嘆かわしや。
★「GALAC」2021年2月号掲載