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【ドラマのミカタ】-「GALAC」2021年1月号

2クール、10年……「重い」挑戦
「監察医 朝顔」(フジテレビ)

木村隆志

 2019年夏に放送された第1シーズンは、全局トップの世帯視聴率を獲得したほか、月9としては2年ぶりの全話2桁を記録。視聴者から1000件近い称賛の声が寄せられたこともあり、「続編は確実」と言われていたが、まさか2クールとは思わなかった。136作目にして月9初であり、局全体で見ても10年ぶりというから、いかに期待されているかがわかるだろう。
 「1話完結の法医学ドラマで2クールって『科捜研の女』かよ」とツッコミたくなるところだが、当作の魅力は法医学だけではない。むしろ法医学ドラマというより、ホームドラマとしての印象が強く、主人公・万木朝顔(上野樹里)の家族が醸し出す温かいムードで視聴者を引きつけてきた。実際、法医学ドラマのファンから「死因があっさり究明されて物足りない」という声が上がっていたし、その一方で、早々に死因究明して空けた時間で家族の物語を見せて、静かな感動を誘ってきたのも事実だ。
 「こんな法医学ドラマは新しいのでは」と感心していたのだが、第2シーズンの序盤はそのバランスが崩れている。朝顔と桑原真也(風間俊介)が結婚し、娘のつぐみ(加藤柚凪)が生まれ、父の平(時任三郎)は東日本大震災で行方不明となった母・里子(石田ひかり)を今も探し続けていた……。第1シーズンからの動きが少なく、監察医としての物語に時折、無理やり家族のシーンをインサートしているような印象を受けてしまったのだ。今後、家族にかかわる病気や死、移住などの問題を描くことが予想されているが、そんな劇薬は穏やかな世界観が売りの当作では諸刃の剣ではないか。いや、それ以上に2クールは長すぎて、さすがにホームドラマとして見せるのは難しいかもしれない。
 そんな不安がよぎった反面、同作がクライマックスを迎えるであろう3月は東日本大震災からちょうど10年を数えることに気づかされた。この大きな節目にドラマという形で、どんなシーンを見せ、どんなメッセージを送るのか。最終話終了後に視聴者から寄せられるのは称賛か非難か。同作に留まらず、フジテレビ自体にとって重要な挑戦となるだろう。
 月9はこの2年間、「SUITS/スーツ」以外は人の生死を扱う作品ばかりで、「月曜から重い」と言われながらも、世帯視聴率では一定の結果を収めてきた。20年春、視聴率調査が大きく変わり、スポンサー受けのいい若年層の個人視聴が重視されるなか、今後もこの路線を続けていくのかどうか。「とびきり重い」当作が鍵を握っているのではないか。

~著者のつぶやき~
震災から10年に合わせた「月9初の2クール」は、若き金城綾香プロデューサーへの期待にほかならず、フジテレビの未来を担うべき人材ということか。美談に偏りすぎることなく、思い切って描いてほしい。

★「GALAC」2021年1月号掲載