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【今月のダラクシー賞】-「GALAC」2020年11月号

ド〜する!?“タブーに挑む番組”のタブー
「朝まで生テレビ!」第400回
(テレビ朝日 8月29日放送)

桧山珠美

 昨今の「朝まで生テレビ!」を見ると、涙が出てくる。討論番組だと思っていたが、これはもう人間ドキュメンタリーだ。主役はもちろん稀代のジャーナリスト田原総一朗。
 放送400回を迎えたこの日のテーマは「激論!ド~生きる?!“コロナ時代”」。戦後75年最大の危機“コロナ時代”にどう立ち向かうべきか、というまさにタイムリーな企画だ。片山さつき、小林慶一郎、津田大介、夏野剛、三浦瑠麗らパネリストは、リモートとリアルで集合。
 そして、いよいよわれらが田原総一朗の登場だ。「放送開始当時53歳でした。『朝生』400回を全身全霊で取り組んでいるジャーナリストです。田原総一朗さんです」 と村上祐子アナ。「田原さん、改めて400回の思いを聞かせてください」と渡辺宜嗣アナが水を向けると、一気呵成に喋り出す。「ともかくね、あらゆるタブーに挑む。実は88年の秋に昭和天皇がご病気になられて危篤状態だった。このとき自粛自粛、ネオンサインまで消す。そのときに編成局長に今こそ、“天皇の戦争責任”やろう……バカヤロウ……3回やりました……」と得々と語る。4回目は「日本人とオリンピック」というタイトルで始めて途中から「天皇の戦争責任」に変えてやったら視聴率が良かった……云々。
 延々と話が止まらない田原に、渡辺&村上アナはそわそわ。突然、画面が切り替わり、田原の自慢話は強制終了させられた。「子どもがまだ食ってるでしょうが!」(「北の国から」黒板五郎さん)、じゃなかった「田原がまだ喋っているでしょうが!」と。番組を400回牽引してきた田原へのリスペクトはどこへやら。
 そして、討論がスタート。ところが、田原の言葉が耳に入ってこない。言語不明瞭は加齢によるものか。おまけにパネリストの話は遮るわ、突然、大声を出すわ、なかなかのやっかいさんだ。もっとも、昔からこうだったのだが、悲しいかな、年を取ると“老害”呼ばわりされるから辛い。終わってみれば、「田原さん、聞いてください、聞いてください」と訴える三浦瑠麗の声しか残らないトホホ感。
 田原の「朝生」への功績は充分承知しているし、ご本人がやる気満々なのもわかる。が、討論番組としては辛いものがあるのも事実。
 御年86歳。その功績に傷をつけないためにも、ご意見番のような形で高見の見物をしていただくとか、テレ朝が早急に手を打つべきではないのか。もう充分だよ、田原さん。あなたは充分よくやった。白いタオルの代わりに「今月のダラクシー賞」を贈る。

~著者のつぶやき~
大島渚に野坂昭如に西部邁に舛添要一……あの頃の論客はキャラが濃かった。最近の人たちは塩分控えめで、物足りない。

★「GALAC」2020年11月号掲載