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【ドラマのミカタ】-「GALAC」2020年6月号

非常時でも変わらぬビジネス臭
「下町ロケット 特別総集編」(TBSテレビ)

木村隆志

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、緊急事態宣言が出された以上、ドラマ撮影が休止されるのは当然だろう。テレビ局にとってドラマほど現場に人が多く、時間が長く、距離が近い“3密”の番組はないからだ。しかし撮影を止めた結果、第1話を放送できた春ドラマはわずか3割程度に留まった。さらにそれすら「数話先の放送中断が決定済み」という話もある。
しかし、不幸中の幸いか、その決断を多くの人々が支持してくれた。むしろ「キャストとスタッフを守れ」「クラスターを避けろ」と強く求める声が目立つのだ。同時に「#再放送希望」というハッシュタグがネット上に飛び交うなど、ドラマの再放送を求める声が殺到している。
そこで各局はどんな対応をしたのか。ここまでは単純に再放送するのではなく、「傑作選」「特別編」のどちらかに分かれているが、残念だったのは、局の思惑で押し付けるようなセレクトが多かったこと。なかでも「半沢直樹」の代わりに、同じ原作者とスタッフが手がけた「下町ロケット 特別総集編」を放送したTBSの日曜劇場は露骨だった。もともと「半沢直樹」も続編放送前に前作の「特別総集編」を2週にわたって放送予定であり、番宣重視の方針がますます明け透けになってしまったのだ。
TBSはその他にも、「MIU404」の代わりに、同じ綾野剛と星野源が出演していた「コウノドリ傑作選」。「私の家政夫ナギサさん」の代わりに、3月まで放送されていた「恋はつづくよどこまでも」の「胸キュン!ダイジェスト」を放送するなど、他局よりも局の思惑が開けっぴろげで、非常時においてもビジネスを優先しているように見えてしまう。せっかく前期、「テセウスの船」「恋はつづくよどこまでも」で視聴者の支持を得たばかりだけに、あからさまなビジネス優先のスタンスがもったいない。
そうは言いながらも「下町ロケット 特別総集編」を見てみたら……やはり佃社長と社員たちの奮闘を素直に見守ることができなかった。「あのシーンをカットするの?」という違和感はスルーできても、ビジネスドラマから漏れ出る作り手のビジネス臭が鼻についてしまうのだ。「いつ撮影再開し、いつ第1話放送できるのか」わからない以上、番宣にこだわって強引に「特別編」を放送するのではなく、一話完結ドラマの「傑作選」にすればいい。どのみち、再放送で獲得できる視聴率は知れている。だからこそ今は目先の小さな数字を追うのではなく、視聴者のリクエストに応じる姿勢を見せてテレビ自体の好感度を上げるべきではないか。

~著者のつぶやき~
「特別編」は「傑作選」よりも編集や確認の作業が多く、そのことも「仕事量を減らすべき」と考える人々からの批判につながった。在宅時間が長い現在は「特別編」より全話放送のほうが向いているかもしれない。

★「GALAC」2020年6月号掲載