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【今月のダラクシー賞】-「GALAC」2020年4月号

各局アナ勢揃いの“同調圧力”うざい
「民放同時放送! 一緒にやろう2020大発表スペシャル」
(民放在京キー局5社共同制作 1月24日)

桧山珠美

東京オリンピック開催まであと半年に迫ったこの日、夜6時40分から20分間、キー局はどこをつけても同じ映像が流れた。新聞のテレビ欄も全部一緒。こんなことは昭和の最後、1988年大晦日の「ゆく年くる年」以来かもしれない、と。思えばあの頃は「レコード大賞」からの~「紅白歌合戦」からの~「ゆく年くる年」というのが昭和の日本人の黄金パターンだったなあ、などと郷愁にかられながら見た。

「東京オリンピックまで」桝太一アナ(日本テレビ)、「あと半年」弘中綾香アナ(テレビ朝日)、「民放同時」安住紳一郎アナ(TBS)、「生放送」竹﨑由佳アナ(テレビ東京)、「一緒にやろう2020」宮司愛海アナ(フジテレビ)、「大発表スペシャル~!イエ~イ(拍手)」(全員)と5人で台詞を振り分けてのタイトルコール。何かに似てるぞと思ったら、小学校の卒業式で「楽しかった遠足」「みんなで頑張った運動会」とやるやつだ。小学生なら可愛いが、大のオトナたちにやられてもなあ。

「全国のみなさん、こんばんは。この番組は日本全国114局の民放が初の生放送。普段はライバル同士ということですけども、オリンピックを盛り上げようという旗の下に、今日は集まりました」(安住)。「さあみなさん、さっそく、こちらのモニターを御覧ください。なんと! 全チャンネル民放同じ映像が、弘中さん、流れてますよ~」(桝)、「こんなことが実現するんですね! ハイ」(弘中)、「信じられませんね~」(竹﨑)、「歴史的ですね~」(宮司)と。まるで人類初の偉業を成し遂げたような口ぶりに驚いた。昭和は遠くなりにけり、か。

なんだかんだ言ってメインは、桑田佳祐の作詞作曲による民放共同企画“一緒にやろう”応援ソングのお披露目。『SMILE~晴れ渡る空のように~』というその歌、桑田らしくていい曲だとは思うが、まったりし過ぎで眠くなってくる。『勝手にシンドバッド』的な勢いのある曲のほうがよかったのに……などと思っていたら……。「日本中が一緒に声を合わせたくなるような、そんな素晴らしい歌詞とメロディでしたね」(桝)、「ホントに何度も聞きたくなるような曲でした」(弘中)、「桑田さん、本当に素晴らしい曲をありがとうございました」(安住)と歯の浮くようなホメ言葉の嵐。

言わされている感満載の“棒台詞”と微妙な“距離感”に、「呉越同舟」という言葉が浮かんだ。「一緒にやろう」とは「同調圧力」のことではあるまいか、ということで民放在京キー局5社に、今月のダラクシー賞を贈る。

~著者のつぶやき~
いっそAI三波春夫に「東京五輪音頭〜令和バージョン」でも歌っていただいたほうが盛り上がるのでは? と思った次第。

★「GALAC」2020年4月号掲載