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【今月のダラクシー賞】-「GALAC」2020年2月号

アニメの明るさ失う実写版にガッカリ
アニメ『サザエさん』放送50周年記念スペシャルドラマ企画
「磯野家の人々~20年後のサザエさん~」

(フジテレビ 11月24日放送)

桧山珠美

「サザエさん」の実写版ドラマ。出演者が発表されたときはそれはそれは興奮したものだ。天海祐希のサザエさんに西島秀俊のマスオさん。濱田岳がカツオでワカメは松岡茉優、そしてタラちゃんを成田凌が演じる。市毛良枝のフネに伊武雅刀の波平。このうえなく理想的なキャスティングではないか。芸達者な俳優陣がどんなドラマを見せてくれるのかと。

描かれたのは20年後のサザエさん一家。波平は定年して隠居。マスオはパワハラ上司とモンスター部下に挟まれ悩める中間管理職に。カツオは職を転々とし、現在商店街で洋食店を経営するも、お客が入らず開店休業状態。ワカメはデザイナーの夢を叶えるためにアパレル会社に就職するも後輩に先を越されて意気消沈。就活難航中のタラちゃんは、本当にやりたいことが見つからず、ドローンを使ったITサービスを開発して起業し、学生ながら成功しているイクラちゃん(稲葉友)と自分を比べて劣等感に苛まれ、女子高生のヒトデ(タラちゃんの妹)は、サザエさんの作るキャラ弁が恥ずかしいからとわざと忘れたり食べなかったり、などなど。あの『あかるいサザエさん』一家に暗雲立ち込める日々。

それだけでも充分重いのに、みんなが楽しみにしていた町内会の盆踊り大会は台風襲来で中止。さらに豪雨でサザエさんが幼い頃、庭に植えられた家族の象徴ともいえる樹木が真っ二つに折れてしまうという追い打ちが。

予想外の暗い話で、見ているこちらも辛くなる。最後はめでたしめでたしで終わったのは救いだが、そこまでの展開があんまりといえばあんまり。誰が「サザエさん」にこんなせつないストーリーを求めているか、って話。

ニッポンの家族も大変、という話を描きたいのであれば、なにも「サザエさん」一家を利用せずとも、ほかをあたってくれ、という感じ。アニメ「サザエさん」50周年のお祝いなのだから、小春日和のようなほっこりする話にしていただきたいもの。

マスオさんの「えぇ~!?」と、ちょっとオデブになったアナゴさん(小手伸也)の声がアニメに寄せていたのはグッド。そういうことでよかったんだけどなぁ。20年後も元気に動き回っていたタマがご長寿なのはなにより。

おかげで、アニメの「サザエさん」を見ても、20年後はああなるのか、と思うと、とても平常心でいられなくなる。あの世で長谷川町子先生もお嘆きでは、ということで、今月のダラクシー賞を贈る。

~著者のつぶやき~
同じ日に放送したアニメ「サザエさん」は全スポンサーとコラボCMというスペシャルバージョン。「サザエさん」愛に溢れて、最高でした。

★「GALAC」2020年2月号掲載