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【今月のダラクシー賞】-「GALAC」2019年11月号

たかがアクセント、されどアクセント
「めざましテレビ」
(フジテレビ 9月18日)

桧山珠美

生放送にアクシデントはつきもの。むしろ、予想外の出来事やミス、失言暴言こそが生放送の醍醐味でもあるわけで。この日の朝もいつものように雑事をしつつ、「めざましテレビ」をながら見していたら……。

「続いてアメリカ・カリフォルニア州。辺りが暗くなった夜に警察官が警戒していたのは、街のゴミ捨て場です。警察官が慎重にゴミ箱の扉を開けると……。なんとゴミ箱から出てきたのは、“いっとうのくま”。実は先月も同じ街でゴミ箱に入って出られなくなった“くま”が見つかり……」と、住宅街に熊が出没したニュースをやり出した。6時36分頃の「Striking NEWS」でのことだ。

音声だけを聞いていたので、「いっとうのくま」が「1等のクマ」に聞こえ、何事かと思った。「クマに1等とか2等があるんかいな。徒競争でもしていたんかいな」と。女性アナウンサーの発音は、“1頭”ではなく、明らかに“1等”だったから。次いでに言うなら、“クマ”の発音も“熊”ではなく“隈”に近く、ますますわけがわからない。

朝っぱらだし、視聴者も半分思考回路が停止したままだろうから適当に流しておけばいいと思っているのかもしれないが、これは由々しき問題ではないか。コーナーを担当していた井上清華アナは、昨年入社したばかりの新人でもあり、そんなに目くじらを立てることでもないかとも思いつつ、駆け出しとはいえアナウンサーはアナウンサー。正しい日本語の使い手であるべきアナウンサーが、これではやはり困る。ただでさえ乱れている日本語がますます駄目になってしまうから。昨今はなんでもかんでも平板になりがちなアクセントだが、だからこそアナウンサーだけが頼りなのだ。

そもそも、この「めざましテレビ」には、三宅正治&軽部真一というベテランアナウンサーが2人も雁首揃えているのだから、もっとしっかりせえよという感じ。三宅アナもももクロだディズニーだとはしゃいでいる場合ではないし、軽部アナも鼻濁音しか興味ないんかい、だ。

早朝ゆえ、百歩譲って口が回らず、咬み咬みになってしまうのは仕方がないとしても(それだってどうかと思うが)、漢字の読み違いやアクセント間違いは、事前の努力でなんとでもなるのではないか、と思うのだが。

たかがアクセント、されどアクセント。ビジュアル重視もいいけど、日本語の担い手としての役目もきっちり果たしてくださいな、ということで、今月のダラクシー賞を贈る。
 
~著者のつぶやき~
テレビ神奈川で放送中の「プロハンター」が面白い。若かりし頃の草刈正雄と藤竜也主演の探偵モノで2人のファッションから台詞からいちいちカッコイイ。今から40年近く前の作品なのにまったく色褪せず、むしろ新しささえ感じる。これはオススメ。

★「GALAC」2019年11月号掲載