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【ドラマのミカタ】-「GALAC」2019年11月号

つまらない序盤をスルーできるか
「あなたの番です」(日本テレビ)

木村隆志

序盤は本当に「つまらない」と思いながら見ていた。30人超のキャストをさばくのは難しく、誰が誰なのかわからない。加えて“マンション住人たちの交換殺人”というテーマのわりに緊迫感が薄く、驚かすことを重視したお化け屋敷のようなラストシーンも微妙。繰り返される住民会のやり取りも冗長で「2クール放送だから水増ししているのか」と感じたほどだった。

ところが10話でダブル主人公の手塚菜奈(原田知世)が殺されたことでムードが一変。突然、「反撃編」がスタートし、手塚翔太(田中圭)のキャラクターがガラッと変わり、新たなダブル主人公となる二階堂忍(横浜流星)が投入され、ミステリーの濃さが増した。「2クール1作」というより「1クール2作」に見えたくらい、限りなく良い意味でだまされたのだ。

その後、視聴者による考察合戦は前例がないほど盛り上がった。「放送が終わるとネット上にはさまざまな声が飛び交い、次回の放送日までああだこうだと楽しむ」という新たなドラマの見方が定着。むしろ放送時間より、考察合戦のほうが楽しげな人が多かったことがその熱狂ぶりを物語っている。ここで重要なのは、ドラマに向けられる人々の言動が受動から能動に変わったこと。これまで作り手は「質の高い作品が求められている」と思っていたが、これからは「視聴者が参加できる作品」が支持を得ていくのかもしれない。加えて、視聴者が参加できる作品のほうがリアルタイム視聴の可能性が高く、視聴率も期待できるだろう。逆説的に言えば、「視聴率を獲りたいのなら、視聴者が参加できる作品にする」ことが近道となる。

話を冒頭の「序盤はつまらなかった」に戻そう。かつては各局が2クールのドラマを作り、視聴者が「つまらない序盤をスルーして面白い終盤に備える」という暗黙の了解があった。そのつまらない序盤が面白い終盤への振りとなり、登場人物への愛着が増すことを共有できていたからだ。しかし、コンテンツがあふれる現在の人々は「せっかちで決して待ってくれない」と思われていたが、当作は「謎解きなどで参加していれば待てる」ことを見事に証明した。

大量の伏線を散りばめたほか、各話5分の短尺版や無料全話配信で追っかけ視聴を促すなどの努力があったことも忘れてはならない。結末に否定的な声もあるが、それこそが熱狂を生み出した証。当作の成功で2クールの作品に挑戦できる素地が生まれただけに、ドラマの多様性を守るためにも、今後は他局も一話完結の安全牌ばかりではいられないはずだ。

~著者のつぶやき~
完全なる余談だが、当作での“袴田吉彦イジリ”には本当に笑わせてもらった。彼は中学・高校の同級生で、何とも憎めない温厚なキャラクターの持ち主だけに、旧友のひとりとして国民的なイジリをうれしく思う。

★「GALAC」2019年11月号掲載